１か月かかってようやく読み終えた。 人生観や生活様式、宗教観、歴史など多岐にわたるテーマで色んな方が書いている。 印象的だったのは、宗教上の巡礼によって経済が回り、旅人が得た知識が地方と中央に拡散され、イスラームが一定の文化教養レベルを維持していたこと。 また、喜捨や祭事に貧しい人に食事を振る舞うなど、相互扶助の意味合いが強かったこと。 イスラム教徒ってこわい、という漠然とした不安や偏見を取り去るにはちょうど良い。 なんとなく、ぼんやりイスラームってこういう世界なのかなあとわかったかんじ。 何度か読み直さないと頭には入ってこないなあ。

何かを評価・判断するためには、まず「知る」ことが必要になる。知ってはじめてものごとを評価し判断を下すことができる。その意味で言えば、おそらく多くの日本人はイスラムを評価し判断することはできない。イスラム国やアルカイダのような武装組織や、ブルカや一夫多妻制に象徴される女性の抑圧といったことは耳にはするものの、はたしてイスラムに関するどれだけのことを知っているのか？知ろうともせずイスラムを危険で差別的なものだと判断を下してはいないか？やはり、知ることから始めるしかない。知るためにはまず「読む」ことだ。「読む」ことはイスラムそのものの根幹でもある。 ところが、イスラムを知ることはそう容易ではない。イスラムはただ宗教だけではないということにも起因する。イスラムは宗教であると同時に、生活であり文化であり政治であり知識でもある。そうした極めて広範な射程を持つ体系を知ることは大変な作業。 その最初の入り口として、本書は十分な広さと深さを提供してくれる。イスラムの信仰のあり方から現代の生活様式までが解説される。もちろん一冊でイスラムを理解するなんてことはありえないが、それでも基本文献としては十分な量と質を持っている。テーマ・目的別のブックガイドも充実しているから、さらに先へと進む手がかりもある。 こういうしっかりとした著作をとりあえず1冊読んでおくだけでも、イスラムを見る目というのは大きく変わると思う。