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存在の耐えられない軽さ
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存在の耐えられない軽さ
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4.3
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冷戦下のチェコスロヴァキアを舞台に、1968年に起こったプラハの春を題材にした哲学的恋愛小説。84年刊。 著者のミラン・クンデラ氏がつい先月、2023年7月11日に94歳で亡くなられていたことを読了後に知った。強く興味を抱いたばかりだったので驚きと同時に哀悼の意を表したい。 ...
冷戦下のチェコスロヴァキアを舞台に、1968年に起こったプラハの春を題材にした哲学的恋愛小説。84年刊。 著者のミラン・クンデラ氏がつい先月、2023年7月11日に94歳で亡くなられていたことを読了後に知った。強く興味を抱いたばかりだったので驚きと同時に哀悼の意を表したい。 「プラハの春」と呼ばれる60年代チェコスロバキアの歴史的時期を背景に、4人の男女の恋愛模様を哲学的に描いた作品。同じ出来事が後から別の視点で書かれたり、時系列が前後して語られることが多く、後半は特に、とある重大な事実が先に明らかにされてからその前後の事柄が飛び飛びで出てくるので、この小説を堪能するにはジグソーパズルを扱うような柔軟な頭の使い方をする必要がある。一本道の物語としてではなく、一つ一つのエピソードと哲学的な文章を味わっていく、というのが正しい読み方なのかもしれない。とはいえ、読みにくかったり難しかったりすることはなく、哲学と恋愛論は非常に相性がいいのだなと感じさせてくれる心地よい文体だ。 人生における軽さと重さ。男女が理解しあうことの難しさ、そこに流れている感情と思考が克明に記され、読者を深い思索に誘う。そして見事なタイトル回収、からの衝撃の展開。物語の筋と哲学的文章が巧みに絡み合う。こんなに味わい深い小説はまたとない。 超絶プレイボーイなのにイヤな感じのしないトマーシュ、純情一直線のテレザ、妖艶な画家サビナ、繊細なインテリのフランツ。この4人のバランスが絶妙。全員が知り合いどうしではないので四角関係というわけではないのだが、フランツは個人的に共感できる要素もあり、どの人物からも目が離せなかった。 抜き出しメモもたくさん取った。一つだけあげるとするならば、善良だが男性としての力強さに欠けるフランツをサビナが見限るシーンがある。作者はこれを、P131「肉体的な愛は暴力なしには考えられない」と表現していて、ここだけ抜き出すと「えっDV肯定?」みたいに思えるがそうではなく、自分のような弱者男性と呼ばれる人間に欠けている致命的な要素をここの文脈で表現しているのだ。これが共感しやすい物語と哲学的文体で書かれているので、下手に説教されるよりも深く心に沁み入る。 第6部で主に政治的背景をもとに語られる「キッチュ」という言葉が痛烈。人間社会における俗悪なものを見抜く目線は、同時に真反対のものを見分ける目線でもあるはずだ。それこそが最終部で語られたものなのかもしれない。ネタバレは避けたいので、とりあえず、カレーニン(犬)かわゆす、とだけ言っておこう。 恋愛にも出会いのタイミングというものがあるが、本との出会いもタイミングであり、この小説にこのタイミングで出会えたことに感謝したい。こんな世界があったなんて……と未知なる体験を開く小説の面白さを存分に味わった。今後の人生で何度も読み返すことになるだろう傑作。
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ハードカバーで読む必要がある本というものがある、と私は思う。本作はまさしくそういった本であった。私は恋愛小説が苦手だ。だがこういう恋愛小説なら私は大手をふって支持することができる。面白かった.......そしてクンデラの書くことが、だいたいそれな????という気持ちを引き起こすも...
ハードカバーで読む必要がある本というものがある、と私は思う。本作はまさしくそういった本であった。私は恋愛小説が苦手だ。だがこういう恋愛小説なら私は大手をふって支持することができる。面白かった.......そしてクンデラの書くことが、だいたいそれな????という気持ちを引き起こすものだから、安心したし、ほっとした。この同意は、私の存在を耐えられないほど重くも軽くもしない、丁度良い重さだった。私も今まで自分の人生に現れるメタファーを見つけては、メタファーと今見えていないものに対し点数を下げている....各章に線を引きながら、先生と一緒に解読していきたいなあと思った笑
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大変哲学的。普通の人の人生をここまで哲学的な思想に高めてしまっているのがすごい。どちらが悪かどちらが善か、軽さと重さ、幸福か不幸か。そんな二極化思考でどちらが正しいかなんて決めることはできない。自分の頭の中のモノサシ自体を疑ってみなければならない。そう感じた作品でした。
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