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浮世の画家 新版 ハヤカワepi文庫

カズオ・イシグロ(著者), 飛田茂雄(訳者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 早川書房
発売年月日 2019/01/11
JAN 9784151200953

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浮世の画家 新版

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商品レビュー

3.8

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2024/04/14

戦後を舞台に、戦前、戦中に画家として活躍した小野が自身の過去を語る回顧録形式の小説。 日本を破滅へと導いた軍国主義を是とし、その信念をもって数々の絵画を発表。 当時大いに受け入れられ賞賛された価値観は、敗戦後には唾棄すべきものとして扱われる。 新しい価値観を理解し、それを認め、...

戦後を舞台に、戦前、戦中に画家として活躍した小野が自身の過去を語る回顧録形式の小説。 日本を破滅へと導いた軍国主義を是とし、その信念をもって数々の絵画を発表。 当時大いに受け入れられ賞賛された価値観は、敗戦後には唾棄すべきものとして扱われる。 新しい価値観を理解し、それを認め、受容すること。 それが戦後で生きていくためには必要なのだが、価値観を変容し、新たなアイデンティティを形成するのは並大抵のことではない。 軍国主義を積極的に支持していたことに対する罪悪感、後ろめたさを拭い去ろうとする心の葛藤。 小野自身とて、もともと軍国主義など信奉していなかったのだというエクスキューズや、今や自身と袂を分かった弟子たちもかつては自分の考えを大いに支持し礼賛していたということを思い出す。 一方で、自身のかつての言動のせいで、自分の娘の結婚などに悪影響が出てしまっていることを危惧し、当時の関係者に当時のことはあたかも「なかったこと」にしてくれるよう求めたことを思い出す。 新しい価値観は認める。しかしそれを認めるとなると、古い価値観をもっていた時代に行ったこと、それに費やした時間はすべて無駄であったということになってしまう。 過去をすべて否定するのか、否定せずに受け入れることができるのか。 この小説はその壮絶な葛藤を、カズオ・イシグロの長編2作目にしてはやお家芸となる「曖昧な記憶」をもって見事に描いている。 舞台設定と表現方法は前作『遠い山なみの光』にとても近い。 戦後十数年で長崎に生まれ、その後すぐに海外に移住したというやや特殊な環境も影響しているのか、戦後という時代に特別な思い入れがあるのだろう。 また、彼が興味の対象としている、「変化する価値観の受容」あるいは「アイデンティティの崩壊と再生」みたいなテーマにとって、敗戦国の戦前、戦後というのはおあつらえ向きということもあるのだろう。 前作では女性の戦後価値観変化の受容、そして今作では男性の戦後価値観変化の受容を扱っている。 変化を受容するというのは、人格的な危機である。 事象AとBがあり、今まではAが正解でBが不正解だったものを、これからはBが正解でAが不正解となる生活を強いられる。 正解の人生を歩んできたと思っていたのが、突然、自分の人生は不正解だと言われる。これは危機である。 そこで、今までの人生を否定せず、新しい価値観を受容する必要があるのだが、そんな緊急事態に際して心が行うのは、記憶の再整理である。 矛盾する価値観に対して、それが矛盾でなくなるように、うまい具合に記憶を再整理し、整合的な記憶として、新たな価値観を自然に受け入れていく作用機序が人間の心にはある。 本作では、前作以上にその心の作用機序をうまく物語に取り込んでいるように見える。 すごい作品だと思う。 すごい作品だと思うんだけどね、私、カズオ・イシグロが描く子供が生意気すぎて受け入れられないんですよね・・・ 物語上で必要な役割だっていうのもわかってるんだけどね。読んでるとビンタしたくなってくる。 たまにビンタ超えて竜巻旋風脚たたきこみたくなる。 私には受容する装置がないらしい。 それでも、素晴らしい作品なのは間違いない。

Posted by ブクログ

2024/02/01

あなたのやったことは間違いだ、と言われるのは腹が立ちます。間違いか間違いではないかの前に、自分以外の誰かに言われることに、まず腹が立つだろうと思います。なぜなら、間違いかどうかを決めるには「これが正解」という基準が必要ですが、その正解はどこから来るのかが人によって違うはずだからで...

あなたのやったことは間違いだ、と言われるのは腹が立ちます。間違いか間違いではないかの前に、自分以外の誰かに言われることに、まず腹が立つだろうと思います。なぜなら、間違いかどうかを決めるには「これが正解」という基準が必要ですが、その正解はどこから来るのかが人によって違うはずだからです。私が行った「何か」は、私の基準によれば正解だったのです。なのに、「あなたは間違いだ」と言われる「正解」はどこから? この本の「小野」が、娘2人から、義理の息子から、弟子から、次女の婚約相手から「間違いを犯した」と判断されたのは、小野が活躍したのが戦争中で、その後「戦後」ではなく「敗戦後」になり、「正解」が正反対になったのが原因でしょう。小野は自分の「間違い」を認めますが、でもあの時はこういう幸福感があった、またある時はこういう信念があった、と繰り返し確認しているのは、「だから自分の人生としてはこれが『正解』だ」、と思うからだと思います。ですがこのように小野が、自分はあの時「間違った」のではなくこう考えたからああいう行動をしたのだ、と振り返れるのは、その行動を取ることについて「考えた」結果だったからだろうと思われます。つまり、この本を読んで「考えた」ことは、「間違ってはいけない」のではなく、「考えずにやってはいけない」のだろうということです。そうしないと、過去の過ちを振り返ろうにも覚えていないという事態になりかねません。そして、「間違いだった」と認めた後はどうすればいいか? また「考える」ことが必要なんだと思います。

Posted by ブクログ

2023/03/19

終戦前後が語られている。ゆっくりと時間が流れる。このドラマに大きな起伏はない。主人公の画家は妻と息子を戦災で亡くしている。娘二人がいる。長女には子どもがいる。画家からすると孫にあたるその子との男同士の会話がユニークである。娘と父親の会話などにも心がひかれる。父親の気持ちを娘はまっ...

終戦前後が語られている。ゆっくりと時間が流れる。このドラマに大きな起伏はない。主人公の画家は妻と息子を戦災で亡くしている。娘二人がいる。長女には子どもがいる。画家からすると孫にあたるその子との男同士の会話がユニークである。娘と父親の会話などにも心がひかれる。父親の気持ちを娘はまったくわかっていない。娘の気持ちを父親はわかろうとしない。次女の1つめの結婚話は破談になっている。その理由が何か分からない。僕は、この小説の舞台が長崎であると思い込んでいた。結局最後までどことは明かされていない。しかし、その思い込みのため、被ばくが原因ではないかと考えていた。「黒い雨」と同じように。でも、全くそういうことではなかった。どうやら父親である画家の戦前・戦中の思想に問題があったらしい。娘の次の縁談に当たって、画家は古い友人・知人をたずね、何らかの聞き込みがあったとしても昔の自分の思想についてあまり話してほしくないということを、それぞれに頼みに行く。弟子には会いに来てほしくないとまで言われている。画家たちにも師弟関係があって一緒に生活をしたりもしていたのか。駆け出しの画家には大した稼ぎもないし、すでに大家となった師匠に面倒を見てもらっていたということか。そして、その師匠の画風から逸脱すると、そこから出て行かなければならない。場合によっては、画家の世界で生きていくことができなくなってしまう。そんなことが、どこの世界でもあるのだなあ。カズオ・イシグロの世界は好きだなあ。 (新版でないのを読んだのだが、何か内容に違いはあったのだろうか。)

Posted by ブクログ

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