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ゾミア 脱国家の世界史

ジェームズ・C.スコット【著】, 佐藤仁【監訳】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 みすず書房
発売年月日 2013/10/07
JAN 9784622077831

ゾミア

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商品レビュー

4.8

8件のお客様レビュー

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2021/12/31

"ゾミア"とは東南アジア大陸部の五ヵ国と中国の四省を含む広大な丘陵地帯を指す新名称であり、その地には約一億の少数民族の人々が住み、言語的にも民族的にも目もくらむほど多様だとされる。 一般にこのような山地に住む人びとは、文明から取り残された後進的で原初的な存在...

"ゾミア"とは東南アジア大陸部の五ヵ国と中国の四省を含む広大な丘陵地帯を指す新名称であり、その地には約一億の少数民族の人々が住み、言語的にも民族的にも目もくらむほど多様だとされる。 一般にこのような山地に住む人びとは、文明から取り残された後進的で原初的な存在として認識されがちである。しかし著者はこのような捉え方に真っ向から異を唱える。ゾミアに暮らす(または世界各地の)山地民たちの多くを、「何々以前」の状態としてではなく、むしろ「以後」としての彼らの生き方を提示する。 著者は、山地で生を営むことは、山地民たち自らによる選択であり、生業(狩猟採集・移動農法)、社会組織(首長の不在・頻繁な分裂と吸収)、イデオロギー(平等主義)、そして口承文化(文字の放棄)さえもがあるものから距離を置くために選ばれた戦略だとする。その対象とは「国家」である。古代国家が誕生して以降、一定数の人々は国家からの徴税や賦役をはじめとした統治を避けるために自ら山地へと生活の拠点を移し、山地の営みに適し、国家に絡めとられないための工夫を編み出した。かつ、彼らは自分たちの社会の内部から国家が生まれてこないための機能もつくりだしていた。 ゾミアにおいて見出されるのは、このような国家形成への反応として意図的に作り出された無国家空間であり、アナーキズム史観の提示でもある。つまり、狩猟採集から灌漑農業にいたるとする不可逆的な社会発展的文明史観の否定である。そのような見立て自体が、国家にとって都合の良い社会の在り方を前提に成り立っているということになる。私個人も、学校教育で焼畑のような移動農法は環境に悪影響を及ぼす農法として否定的に教えられていた記憶があり、実はそれが誤りであるという本書の指摘に驚かされるとともに、現実に国家からみた認識を疑いなく受け容れていることを示すわかりやすい一例だろう。 本書を通してとくに従来の認識を改めさせられるのは「民族」「部族」といった集団に対する定義の恣意性と曖昧さである。このような集団の定義はおおむね国家によって「野蛮人」の烙印を押された、国家に従わない人々に対して一方的に与えられる。実際の「民族」「部族」は離散集合も激しく外部の文化や人を積極的に吸収し複数の言語を扱うことなども珍しくないため、本来は厳密な定義をすること自体が困難だ知らされる。そして、そのような集団は生来的な性質や文化、言語といったものではなく、先にあるような人々の意志にもとづいた政治的な選択によって成立する。 ここで描かれる過去のゾミアにあるような山地民の生き方は、(多くの奴隷や戦争の捕虜によっても占められた)国家に暮らす人々と比べてはるかに魅力的に映る。その魅力を支える主な要素は、やはりその平等主義だろう。それは明確な階層社会と貧富差のある平地の水稲国家とは対照的である。同時に、本書が山地民と対比して描きだし、かつ山地民と切り離せない表裏の関係にある「国家」のありようを見るにつけ、全てが一致するわけではないにせよ現代の国家にもつながる国家の本質を理解するためのヒントが数多く示唆されているのではないかと思える。 著者が何度か繰り返すとおり、本書にあるようなゾミア・山地民の生き方は1950年以降の現代のについては当てはまらない。各種のテクノロジーの向上によって実質的な距離が極端に縮まった現代では、世界中のどこであっても国家の網の目を完全に逃れての営みは不可能に近い。また、かつては低地民より山地民のほうがむしろ健康的だったという事実についても、衛生や医療が進歩した現代社会では事情が異なるだろう。しかし、それほど遠くない時代まで、人間の多くが自らの意志で国家を回避して主体的に生き方を選ぶことが可能だったという事実からは、人とその社会にある潜在的な可能性の豊かさについて希望を教えられる。それはいまの社会以外の正解は存在しないという固定観念から解き放つものである。 本文約340ページ、上下二段組。実際に読んだ感覚としてはかなりのボリュームがあった(例えば上下巻ある『サピエンス全史』以上)。本書は価値の高い良書だが、同様のテーマでもう少しコンパクトな著書をお求めなら、古代メソポタミア社会を対象とした同著者による『反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー』もかなりお薦めです。

Posted by ブクログ

2020/09/27

ゾミア―― 脱国家の世界史 (和書)2014年01月18日 16:22 ジェームズ・C・スコット みすず書房 2013年10月4日 柄谷行人さんの書評から読んでみました。 柳田国男さんの山人について柄谷さんが書いているのを読んでいて、なんとタイムリーな内容なのだろうかと感動...

ゾミア―― 脱国家の世界史 (和書)2014年01月18日 16:22 ジェームズ・C・スコット みすず書房 2013年10月4日 柄谷行人さんの書評から読んでみました。 柳田国男さんの山人について柄谷さんが書いているのを読んでいて、なんとタイムリーな内容なのだろうかと感動しました。 「文明的」とは「国家の支配におかれた」といい「未開」とは「国家の支配をかわす」というという最後の指摘は今までの視点を変えることに非常に有益で簡明な指摘でした。 この本を読んでいて僕は今まで自分が生きてきた中でゾミアというものを必要としてきた生き方を思い出していました。自分の今までの人生の記憶とそういった国家への姿勢が僕の生まれた時から学校という制度や企業や世間やそういった僕自身が平地民として国家に囲い込まれて同化させられようとしていた、その抑圧の中で思考停止やそれによるダメージが自分自身にあったと僕は感じています。 僕はどうすれば良かったのか?ゾミアという生き方があるということそれが今は消えつつあるが柄谷さんの言う抑圧されたものの回帰としての哲学というものを真剣に考えてみたいと思います。それはゾミアの回復というものになるだろうと思い、この本を読めて本当に良かったです。 図書館の方にもお礼を言いたいです。

Posted by ブクログ

2020/03/12

ジェームズ・C・スコットの壮大な見方の転換術とでもいうのだろうか。新しい考え方に触れた。授業でやりました。

Posted by ブクログ

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