本書は、起業したいと思っている人、社長になりたいと思っている人に向けたものです、筆者は元国税調査官です。成功するためには、いろいろな要素がありますが、まず第一に挙げられるのは「悪」です、ビジネスの啓蒙書などでは、成功した人は非常に人格者で善人だというふうに書かれることが多いです、しかし、それは現実的ではありません、私は成功した人で、まったくの善人という人に会ったことがありません。誠実さと狡猾さは社長にとって「両輪」といえるものです、筆者は誠実さだけを持っている経営者にお目にかかったことは一度もありません、また「できる社長」は、非常に腰が低いという特徴があります。業界を変えてしまうほどのパワーを持った事業者が出てきて、既存のルールをめちゃくちゃにしてしまうことも、たまにありますが（ダイエーが登場したときなど）、それはごく稀なケースなのです、だから、悪の社長たち（できる社長たち）というのは、業界のしきたりを熟知し、これをうまく利用しています、これを上手に利用できない生真面目な社長たちは、起業して早々につぶされてしまうのです。ユダヤ教徒たちは、週に１回は必ず休むのです、休んで、一旦仕事から離れることで、仕事に対する能率を高める作用があるように筆者は思うのです、”悪の社長”の共通する特徴として、ちゃんと休むということとともに、よく遊ぶということがあります。公務員の作る裏金のほとんどは、旅費を使って捻出したものなのです、出張がある会社は幾多ありますが、旅費規程を作っている会社はあまり多くありません。かのトヨタ自動車も、2013年3月に社外取締役として、元国税庁長官の加藤治彦氏を招き入れましたが、これも究極の税務署対策といえるでしょう、元国税庁長官が取締役となっていれば、国税もそう無茶なことは言ってきません。もし、税務調査で粉飾決算が見つかったら、調査官はどうすると思いますか？　実は、黙殺するのです、粉飾決算というのは違法行為ですが、国税調査官の管轄ではありません、粉飾決算を指摘すると、税金還付が生じたりするので、調査官としては、手間ばかりが増えて実りがないということになるのです。真面目で努力家の人というのは、とにかく「多く労をかければ報われる」と思い込んでいる人が多く、「報われるためにはどうすればいいか」ということを合理的に冷静に考えようということはなかなかないのです。人によっては「自分の好きなことがすなわち自分の得意なこととは限らない」ということです、「下手の横好き」という言葉があるように、自分の好きなことなんだけれど、実はあまり得意ではない、ということはけっこうあるものなのです、自分の不得意なことで成功するのはなかなか難しいものです、その辺の見極めは、ビジネスの成功の上では、絶対に必要になるのです、好きだけれど、得意じゃないことならば、勇気をもって諦めるという決断も必要なのです。