ドラッカーが自らの著書で『人生で最大の幸せは、ドリスに出会ったこと』と述べている。どんな素敵な人物なのだろう・・・と思って本書を手に取った。実母に縛られた窮屈な生活という一面もあるが、社会に出てマルチな才能を発揮。その頃、意外な場所でドラッカーと再会する。人生の不運を乗り越えていく生き方は、現代の女性にも多くのヒントを与えてくれる。

ドラッカーの妻、ドリスさんが書いた自伝。 はじめに、ドラッカーとの出会いについてさらっと触れているが、それ以降はドイツ生まれである彼女の幼いころから、ドラッカーとの出会いの前までを描いている。 ドラッカーも「傍観者の時代」という、すばらしい自叙伝を書いている。彼らの共通点と言えば、ともに激動の時代に生きて、自国にとどまらず、若いうちに様々な国に住んでいること。また、ドリスさんでいえば、法律や経済にとどまらず、物理までもと、ともに幅広く学んでいることだ。 100年前といえばどこも同じだろうが、親の権威が強く、彼女が結婚するまでは強権的な母親との戦いである。そこで、折れてしまう子供がほとんどだったと思うが、彼女の場合、最終的には母親も立てながら、自分のやりたいことを実現していくスマートさがあった。で、ドラカーと同じく、多面的な分野で長きにわたって活躍し、今なお100歳を超えて健在であるらしい。 私は日ごろ小説を読まないので、本書から垣間見れる100年前のヨーロッパの人たちのくらしは新鮮に映った。また、時代の最先端のこともよく知っていたドラッカーが、若いころはこのような世代の確執や時代の壁と戦ってきたのかと思うと、ドラッカーを読む際に、そういった前提も考えて読まないといけないなと感じた。 最後にはドラッカーが、「ドリスと暮らして60年、「幸せな結婚の秘訣」とは・・・・」という一文を寄せている。 初期のドラッカーの著作を執筆するときには、ドリス夫人が編集に携わっていたらしい。しかし、もめるので、結婚生活の安定のために止めたとのこと。それでも、最も優秀な編集者だったと彼は語っている。 仕事にはお互い口出ししなかったけど、双方が多大な影響を与えあっていたらしい。 夫婦が各々の仕事で大いなる成果を出し、かつ夫婦仲も良かったことを聞いて、やはり彼らは器が違うな、と感じた。