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田園の憂鬱
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田園の憂鬱
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商品レビュー
3.3
27件のお客様レビュー
佐藤春夫の代表作。詩人として有名な佐藤春夫だが、現代の読者家からは詩よりも本作が有名ではないだろうか。 本作は、妻とペットを連れて、都会から田舎へ引っ越した若者の心情の移り変わりを、精緻な風景描写とともに記述したものだ。 著者が実際に置かれた状況と似ているので、私小説かもしれな...
佐藤春夫の代表作。詩人として有名な佐藤春夫だが、現代の読者家からは詩よりも本作が有名ではないだろうか。 本作は、妻とペットを連れて、都会から田舎へ引っ越した若者の心情の移り変わりを、精緻な風景描写とともに記述したものだ。 著者が実際に置かれた状況と似ているので、私小説かもしれないが、そうでないようにも思える。私小説のように、作者が物語に介入しているとは感じないのだ。しかし、主人公が見る景色、田舎で得た感情はあまりに瑞々しく、鮮明だ。そして、時々濁りも混じっている。これは実際に経験しているものでないと書けるはずがない域に達している。 本作が私小説ならば、私小説の灰汁を上手く掬い出せている。私小説でないならば、想像で(実際に見たものもあるだろうが)情景をここまで言語化できるのも素晴らしい。 自分が置かれている場所から憧れた場所への跳躍、そこでの喜び、発見、そして苦悩。そうした状況は、100年以上経っても、人々の共通項として立ちはだかり、新たな世界をもたらしてくれる。
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初めて佐藤春夫の作品を読みました。 都会の重圧と喧騒から逃れるために青年は妻と二匹の犬、一匹の猫を連れて草深い武蔵野の一角に移り住む。来る日も来る日も自然を見詰め、対峙し続ける青年は憂鬱と倦怠に沈み込んでは幻覚、妄想に絡め取られてゆく。 物語の筋らしいものはなく、圧倒的な豊かな...
初めて佐藤春夫の作品を読みました。 都会の重圧と喧騒から逃れるために青年は妻と二匹の犬、一匹の猫を連れて草深い武蔵野の一角に移り住む。来る日も来る日も自然を見詰め、対峙し続ける青年は憂鬱と倦怠に沈み込んでは幻覚、妄想に絡め取られてゆく。 物語の筋らしいものはなく、圧倒的な豊かな自然描写と克明に描かれる青年の内面とが互いに響き合い、重なり合って、深く繁る蔓草のような複雑なアラベスクを織り成す。 終盤に彼が叫ぶ「おお、薔薇、汝病めり!」は、そのまま彼の心の有り様を示しているように思えます。
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学生時代以来、25年ぶりに読む。国立の増田書店で買った文庫。5回の引越しを経て、かなり状態良く残る。 タイトルからして憂鬱と言っている通り、とにかく陰気。東京の街中から田園に引っ越した人がネイチャーの中で経験する、嫌気と数々の幻聴幻覚。
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