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自選 串田孫一詩集

串田孫一(著者)

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定価 ¥4,730

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 彌生書房/
発売年月日 1997/06/10
JAN 9784841507300

自選 串田孫一詩集

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2019/12/05

〇あの聲 あの深く澄んだ聲で 歌をうたっているのは誰だ 遠い国の大きな人が それとも私の耳のせいか 胸いっぱいに想いを満たし それを惜しげなく歌っているのは誰だ みんな聞いていないのか やっぱり私の耳のせいか 〇燕 燕が鳴いている うれしそうに今年の巣を造っている 雨の音...

〇あの聲 あの深く澄んだ聲で 歌をうたっているのは誰だ 遠い国の大きな人が それとも私の耳のせいか 胸いっぱいに想いを満たし それを惜しげなく歌っているのは誰だ みんな聞いていないのか やっぱり私の耳のせいか 〇燕 燕が鳴いている うれしそうに今年の巣を造っている 雨の音は僅かだが 静かな書間十一時 誰か口笛を吹いている 雲は雲の前を白く流れ 燕が啼いてゐる 〇栗の花の散る頃 空が乱れ 黒っぽい雲の先が 宿かりのように もぐもぐ巻いて下がり 何処もかしこも赤く深く その空だけを見ていると 世界もこれで終わりそうだ 終わりそうだと考えるのが 今日の私の胸の具合だと いやなことになるからやめて それで木々の藁ぶきを見ている 緑の幼児 黄色のちらばり、、、 〇 上野駅の校内の 鉄錆にそまった砂利の上で 朝の雀が朝日を浴び たんぽぽとははこぐさが 初夏のちんまりした風にふかれて 人の姿を見送っている 隣り合って 人の容姿を見まもっている 明日明後日の私の旅 どういうものかおどおどする私の方をも 風に揺られて眺めてゐる 〇 誰も載っていない三輪車が 坂を走り 横へそれて倒れて止まる 車が廻っている それもすぐにとまったが そのあいだの遠くの雲は 特別澄んでいるようだった 〇 六月のねむい大気 それをいいことにして 六月の太陽は霞み それをいいことにして 私は機嫌がよくない きんきん鳴る野暮な耳 では遠くを見よ 今日は遠くも 旅九月のねむい大気 〇 歌が聴こえる 私は川原の胡蝶の翳 桃を食べている お前 どこにいるの もうその歌はいい 遠くに赤い桟橋が見える 〇 とまらない もうどうしたってとまらない 声が聴こえるようだ 麦わら帽子がとぶ ころべない 硫黄がつんと匂う 滑る赤い道を こんなに早く それから分らない 雲が天へ落ちて行った 〇 田んぼ一面 思う存分の緑だが 見上げる天は殆ど黒 私は教えられた通りに草を取る 時々威張って伸びた稗を見つければ 教えられた通りに引っこ抜く どろんこ水は湯になって なんだがぶちゅぶちゅ言っている 自分が植え付けられてここまで育った稗を 何処の誰が食べるのか知らないが 、、 〇★★ もう夜だか分からないが この宿の部屋から見えるのは もっそり大きくふさふさの木 その向こうで稲妻が盛んだ 風がなくて 浴衣がどうにもなじまなくて 私は坐って汗をかいている 赤い星がもうかくれる 〇 白いでこぼこ道だが それが丘を優美にうねっている 何しろ夏の もうたっぷりした夕方で こう風景が赤っぽくなって来ては 恥ずかしさもこぼれる 薔薇になって散っていく気持 人の顔もきれいに見えるが その人にもめったに会わないで 黒松ばかりの黒い林の中に 白ユリがいくつも咲いている 〇★★ 雲が大きい と言って蒼空も広い 秋の石城平に 鳴子が光っている 飛んで行く鳥の翳が かっきり見える 〇 幾つも幾つもの 薄く消えて行く雲が 今夜の私の中にある こんなに青い こんなに白い そのまんまの空と雲 疲れすぎて眠れない目で 幾つも幾つもの雲の流れを見ている こんな空が私にはあった 私はいつまでも見てゐたい 〇 空はすっかり曇っている 曖昧な雲はどこにもない ふるい駅の前だ ここで一種の心境を抱くことを戒めながら それはやっぱり無理かと思う 空はこんなに曇りきって ぎっちりと考え込んでいるのに 町にはあんまりいのんきな灯がつく 向こうの街角に 立って下を向いて 何か食べている男がいる 食べ終われば行ってしまう人なのだが 遠くから見ていると その人だけが仲間のように見えて来る その姿ももうなくなって 灯ばかりがちらちらしている 〇 さっき振り出した雨は 星もたくさん出ている天からの ただしんとしたものだったが こっちの方は大分本降りで もう襟のあたりに垂れ込んで来る あの三角原の小径から 竹藪のへりに沿って来ると 雫のしとしとも大げさになる 月のせいでどんより明るくはあるが なんだか夜が深く重く 底の底を歩いてゐる感じ ぼやんと見えている顔は 誰の顔だかよく分かる いやな顔して

Posted by ブクログ

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