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双頭のバビロン

皆川博子【著】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 東京創元社
発売年月日 2012/04/23
JAN 9784488024932

双頭のバビロン

¥3,080

商品レビュー

4.4

48件のお客様レビュー

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2020/04/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

単行本の大きさで上下2段組みビッシリの538P。中味もゴッテリな壮大さの大河小説。さすが皆川博子、少々食べ過ぎた感があるくらいお腹いっぱいの1冊である。 20世紀初頭から第二次大戦前夜までのハリウッド、上海という2大退廃都市(バビロニア)を中心舞台に、癒着双生児として生まれた2人のゲオルグとその二人をつなぐツベンゲルらの生き様を描く。 この作品に漂うのはひたすらに退廃とか爛熟とか腐敗とか魔窟とか…そういう類のものばかり。特に上海租界の描写ときたら文字で読んでるだけでも鼻をつまみたくなるくらいの圧倒的不潔感。 だからと言って、物語まで腐っているわけでは決してなく、ドラマの展開は素晴らしい。特に後半に登場人物たちのこれまでの所作がつながって全体像が俯瞰できるようになっていく描写は見事。腐敗臭の中でもため息をつきたくなるほどである(いや、実際に腐敗臭はしていないから) 体力と気力にある程度余裕がないと、読み切れないかも知れないボリュームと雰囲気。それでもこの手の作品を許容できる人にはお勧め。若干苦手な俺でも面白かったし…。 でも、今の気分は、ちょっとしたお手軽爽やかものを読んで疲れをほぐしたいような。

Posted by ブクログ

2019/12/28

単行本、二段組、540ページ。分厚くて重たかった。それに見合うように、最高に面白くて読み続けた。 作者の博識が、ストーリーの展開、時代背景、登場人物の動きまでいきわたって、興味が尽きない上に勉強にもなった。 文章は耽美的、幻想的なのに読みやすく、舞台になった都市の描写も、物語にし...

単行本、二段組、540ページ。分厚くて重たかった。それに見合うように、最高に面白くて読み続けた。 作者の博識が、ストーリーの展開、時代背景、登場人物の動きまでいきわたって、興味が尽きない上に勉強にもなった。 文章は耽美的、幻想的なのに読みやすく、舞台になった都市の描写も、物語にしっくり馴染んでいた。 題名のように、双頭は双子の意味で、脇腹で癒着した子供が4歳の時、手術で分離されて、お互いに数奇な運命を辿る。 オーストリアの貴族の家に生まれた子供は二人になり、ひとりは家の跡を継ぎ、一人は存在を消されて「芸術家の家」と呼ばれる施設に入れられる。 そこは精神に異常がある人たちを収容した施設だった。 あとを継いだゲオルクは順調に教育を受け陸軍学校にすすむ。そこで決闘騒ぎを起こし、家からは廃嫡され、アメリカにわたる。 もう一人ユリアンは施設で高度な教育を受けて育つ。そこには一つ年下のツヴェンゲルという少年がいた。 ゲオルクはアメリカで死亡したとされ、折から勃発した戦争に、ユリアンはゲオルクになり、ツヴェンゲルとともに志願して戦場に出て行く。 そこで初めて非在であった身分が公に認められ、国籍を持てることになる。 だが、ゲオルクはアメリカで映画監督になっていた。 二人の運命が交差する様子は夢のようで、胎内の記憶が現れること、自動書記の形で覚えのない出来事が記録されること。まだ会ってもいない頃から不思議な現象で繋がっている。 ゲオルクは映画を作るために上海に来ていた。 ユリアンは映画館のアルバイトでピアノを弾いていた。そこで画面にゲオルクの名前を見つける。 教育係で父親のように親しんでいたヴァルターが殺された、ゲオルクの影を見たと思う、かれの仕業ではないか、問い詰めるために彼もアメリカへそして上海に渡る。 いつ二人は出会うのか、読むのが止められなかった。 ツヴェンゲルもアメリカにわたり、速記士のなってゲオルクのもとで助監督をしていた。 こうしてそれぞれの行く先は奇妙な偶然が重なり、時に意図的で絡まった糸が次第にほぐれてくる。 ゲオルクの生家(養家)は戦後の民主化で没落していたが、教育係をしたブルーノもまたユリアンのいた収容所で死んだ。 これらの真相がミステリの部分で、最後には悲劇的な形で明らかになる。 ゲオルクとユリアンの交互の語りという形で時間が進み、それにツヴェンゲルが絡む。 上海の、眼を覆うばかりの汚泥と糞尿、貧民屈、鴉片の臭いの立ち込めた風景を生生しく描写した所もある。 無声映画時代のハリウッドの映画事情、当時の俳優たち、まさにトーキーにうつる頃の映画界も興味深い。 二人の見る悪夢のような共通の記憶も、距離のある場所でそれぞれに現れる幻影も、それに悩まされ、過去の姿を見ることが悲劇的で哀しい。 忘我の中で白紙の書き連ねられる文字、現れる過去の出来事など。不思議な繋がりを重厚な物語にした、実に読み応えのある作品だった。

Posted by ブクログ

2019/04/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

最初は生々しい複数人による一人称の歴史書といったような感覚で読み進めていたが、終盤の怒涛のミステリー展開にはゾクゾクした。入念すぎる前提部分の上に成り立つ極上のディストピア耽美。堪らん。私にとっての皆川小説は、半分くらい著者の執念を愉しむ為の媒体なのかも。 読み終わると、ミステリー的要素は、ヴァルターの死の真相を追うというのが割と初期からあったんだなあと気付きました。まあそれ以外に結合双生児とか精神感応とか女装趣味とかの怪しいファクターがてんこ盛りなので、私の中では割と埋もれたのですが…。 あのタイミングで出て来たユリアンとツヴェンゲルの結合写真には監督同様ガチで鳥肌。その後の天井の三つの顔も。怖いとか気持ち悪いでは済まない、ここに至るまでの物語を読んできた者のみが味わえる、不快なまでの不気味さ。そこになぜか恍惚とさせられるのが、皆川作品の魅力だと思う。

Posted by ブクログ

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