1,800円以上の注文で送料無料

  • 中古
  • 店舗受取可
  • 書籍
  • 書籍

祝福

高原英理(著者)

お気に入りに追加 お気に入り 追加 追加する お気に入りに追加 お気に入り 追加 追加する に追加 に追加する

定価 ¥2,420

¥1,210 定価より1,210円(50%)おトク

獲得ポイント11P

在庫わずか ご注文はお早めに

発送時期 1~5日以内に発送

店舗受取サービス対応商品

店舗受取なら1点でも送料無料!

店舗到着予定

5/25(土)~5/30(木)

商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 河出書房新社
発売年月日 2023/07/25
JAN 9784309031170

店舗受取サービス
対応商品

店舗受取なら1点でも送料無料!
さらにお買い物で使えるポイントがたまる

店舗到着予定

5/25(土)~5/30(木)

祝福

¥1,210

在庫わずか
ご注文はお早めに

カートに追加するカートにいれる

商品レビュー

5

1件のお客様レビュー

レビューを投稿

2023/11/27

リストカットをくり返していた少女は、一瞬だけの邂逅に終わった女性の言葉に啓示を見いだす。文芸ライターは架空の小説家が書いた一文に取り憑かれ、幼い子どもたちは廃工場の薄暗がりで残酷劇を演じる。誰かが残した言葉は伝播し、解釈され、語り直されて輪廻を巡ってゆく。言葉と入れ替わるようにし...

リストカットをくり返していた少女は、一瞬だけの邂逅に終わった女性の言葉に啓示を見いだす。文芸ライターは架空の小説家が書いた一文に取り憑かれ、幼い子どもたちは廃工場の薄暗がりで残酷劇を演じる。誰かが残した言葉は伝播し、解釈され、語り直されて輪廻を巡ってゆく。言葉と入れ替わるようにして肉体が消滅した人びとに捧ぐレクイエムのような連作短篇集。 最初ただの短篇集だと思っており、「リスカ」から「正四面体の華」へ繋がって連作なんだ〜と気づいた。三章「ガール・イン・ザ・ダーク」までの構成は語り手を変えながら殺人事件の真相に迫る恩田陸の『ユージニア』などを思わせなくもないけれど、本作はミステリー的には展開していかない。言葉とそれを発した/記した人間との関係にまつわる哲学的な問いをテーマに、章を進めるうち内容はディープになっていき、意味を掴みきれない祝詞のような擬古文体が地の文まで侵食してくる。 二章目の「正四面体の華」はこの作品のテーマを(まだ祝詞化するまえの文章で)噛み砕いて説明してくれていて親切なのだが、インターネット時代の文芸ライターが架空の小説の評論ぐらいでそんな動揺する?と思ってしまう。むしろ評論本を見つけた時点で創作を疑ってほしい。そんなわけで語り手がクソ真面目に東郷を問いただす場面は全然ノレなかったが、おそらくボルヘスやレムのような言語遊戯はテーマにそぐわないからわざと省いたんだろう。同じく、後の章でもポストモダンの研究者などをだしてテクスト論に目配せをしているけれど、それも本質ではないと斥けているようだ。 特に面白くなってくるのはミレイのブログがその後ウェブ上で活動する新興宗教に発展したことが明かされる「目醒める少し前の足音」から。ブログはいわば聖地化し、ミレイの死後も依代によってお告げのような文章が更新され続けているのだが、依代に憑依するのはミレイ自身の魂というよりも、ミレイを目醒めさせたアサミさんの言葉のような、依代自身の潜在的な内なる他者の声なのである。この教団の思想自体は「私」を「和多志」と書くような現実に見るインターネットカルトの様相にかなり近いのだが、そういう言葉を使うようになった人たちの切実さにシンパシーを感じているような描き方がされている。この辺は信者サイドの物語を描かないことで余白を持たせているのが良いと思う。ミレイがカルト的に人気を得ていく過程は、二階堂奥歯さんに代表されるようなウェブ日記文化の黎明期を連想させる。 冒頭のあらすじに書いたように、私が本作から受け取ったのは言葉を残して死んでいった人たち、特に自死を選んだ人たちのその選択を肯定したいという祈りだ。誰の発言とは問わず言葉そのものの話をしているようで、どの話もずっと〈遺した人たち〉のことを語っているように思えてならなかった。時に天才病のように揶揄されもする文学者の自死という影の歴史や、インターネットを通じて言葉だけの人格が生みだされては死んでいくそのくり返しを、低く轟く祝詞のような声で〈正しい〉と祝福する。その上で人は死んでも言葉が残ると何度も念を押す。それは確かに呪いでもあるだろう。 今まで読んだ高原さんの小説で一番ぐいぐい惹き込まれた。特に不気味で面白かったのは「精霊の語彙」。折口信夫の『死者の書』とか舞城王太郎の『淵の王』とか、ジョイス・キャロル・オーツもこういう語り口の短篇あったな〜とか思いつつ、スピリチュアリズムの描き方が上手い作品だった。いざなぎ流の祭文とかが元ネタなのかなぁ。謎の透視術が解き明かされずに放置されてるのも不思議で面白い(これはメタ的な仕掛けなのかも)。 終盤は思いっきり三島なヴィジョンがでてきたりしてどんどん怪しさを増していくのだが(百合白ってネトウヨだよなぁ)、最終章の「帝命定まらず」では陵王とグノーシス主義(とエリザベス1世?)を融合させた擬古文体の幻想物語を語りだして最高!と拍手を送る気持ちになった。あえて言えば作中人物が取り憑かれる言葉たちに私はあまり心動かされなかったのが残念だけど、ある人にとっては目の前を一瞬で通り過ぎる言葉が、別の人には人生を一変させるような劇薬になりうることこそ本作のいう〈祝福〉の意味だろうから、それでいいのかもしれない。

Posted by ブクログ

関連商品

最近チェックした商品