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文士の料理店
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文士の料理店
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商品レビュー
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文人たちの愛した料理と店を紹介している。 「店」を紹介するガイドブックではなく、「文人とその食」を紹介する。 1編ずつは短いが、文士の個性が余すところなく描かれていて、その作家をどう読もうか、という参考にもなる。 舌が肥えすぎ、店主や客を人間観察しすぎ、事情を察しすぎ、と感覚の鋭...
文人たちの愛した料理と店を紹介している。 「店」を紹介するガイドブックではなく、「文人とその食」を紹介する。 1編ずつは短いが、文士の個性が余すところなく描かれていて、その作家をどう読もうか、という参考にもなる。 舌が肥えすぎ、店主や客を人間観察しすぎ、事情を察しすぎ、と感覚の鋭すぎる文士たちはしばしば「店から見れば、厄介な客」と書かれている。 ・森鴎外は、書く気になれば『東京料理店案内』を出せるほど東京の料理店に精通していた。 ドイツで学んだのが衛生学だったので、食に影響した。 生ものを避けたのは知られているが、とろみのついた物には細菌が入りやすいとして、マヨネーズなども嫌った。 ・夏目漱石は、甘いお菓子と脂っこい洋食を好んだ。 ・尾崎紅葉は、臨終の席へ門弟を集め「これからは、まずいものを食って長命(ながいき)して一冊でも一編でも良いものを書け」と言い残した。 ・泉鏡花もバイ菌嫌悪症。鴎外より徹底している。 ・永井荷風は気むずかしい老人。フランス帰りで舌が奢っていたが西部劇っぽい外見の洋食屋「アリゾナ」には69歳〜79歳まで昼食に通い続けた。 ストリップ劇場に通い、ダンサーや娼婦と仲の良い座付作者、助平で気前のいい爺さんの一面。 文化勲章を受賞したことで「偉い先生」であることがバレて踊り子たちからの接し方が変わる。 気軽におっぱいやお尻にさわれなくなった。 ・斎藤茂吉は、医師であり歌人。ギリギリの少し危うい歌を詠む。鰻を狂信的に好き。 ・高村光太郎、超肉食派。いろんな意味で。 ・岡本かの子は強烈な女。「駒形どぜう」は何度も焼けたが再起した。 ・檀一雄の魂は、料理することで慰安されていた。 ・水上勉は、飢餓の文学。 ・池波正太郎少年と、資生堂パーラーの給仕の少年との交流は、良い話。 ・遠藤周作は、リヨン大学に留学した経験から、日本のフランス料理のうさんくささを見抜いていた。 ・吉行淳之介の、屈折した偏食エッセイ。 ・三島由紀夫は、病弱少年からボディ・ビルで肉体改造、からの割腹自殺。 ・武田百合子、夫・泰淳とは異質の価値観を持つ。 ・山口瞳は、サントリー宣伝部員として、あちこちのバーに潜入調査に入った。 ・吉村昭は居酒屋を探す名人。 ・向田邦子は料理上手だったが、小説に登場すると料理が一触即発の武器となった。 ・開高健にとって、死ぬまで付きまとう深刻な欲望が「食欲」。向かうは臓物系。 (食を語るにあたって)「小説家は言葉の職人なのだから『筆舌に尽せない』『いうにいわれぬ』『言語に絶する』は書かない」と自戒した。
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嵐山光三郎には「文人暴食」「文人悪食」という先行する好著があるが、この本は同じ食を扱っていても背景には店があるせいか、筆の勢いにはややためらいがあるようだ。 それでも、自分の好きな店などいくつか出てくるので、ほぅ、へぇ、といった感想を持ちながら楽しく読んだ。しかし、いちばん印象に...
嵐山光三郎には「文人暴食」「文人悪食」という先行する好著があるが、この本は同じ食を扱っていても背景には店があるせいか、筆の勢いにはややためらいがあるようだ。 それでも、自分の好きな店などいくつか出てくるので、ほぅ、へぇ、といった感想を持ちながら楽しく読んだ。しかし、いちばん印象に残るのは火宅の人で知られる檀一雄が、嵐山光三郎が接待で招いた料亭でただのひと口も料理に手をつけなかったというエピソード。嵐山は理由を書いていないが、檀一雄の読者としてはなんとなくわかる。またその檀一雄を好ましいと思う。
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「文人悪食」「文人暴食」の著者による明治、大正、昭和の作家達が贔屓にしたレストランガイド。森鴎外から開高健までゆかりの22軒が紹介されているが、これだけ残っているだけでも奇跡に近いだろう。消えないうちに出かけて、料理を味わいと作家達の痕跡を探してみたい。
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