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村が消えた
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村が消えた
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10年に渡る取材を経て書き上げられたルポルタージュの傑作である。 再読にも耐えられる作品だが絶版なのが惜しい。 昭和初期に続いた大凶作で東北地方、そこへ満州開拓団の募集がかかる。 豊饒な大地を夢見て渡った満州では匪賊による反日・抗日運動に晒される。 農民たちが願ったのは安定した...
10年に渡る取材を経て書き上げられたルポルタージュの傑作である。 再読にも耐えられる作品だが絶版なのが惜しい。 昭和初期に続いた大凶作で東北地方、そこへ満州開拓団の募集がかかる。 豊饒な大地を夢見て渡った満州では匪賊による反日・抗日運動に晒される。 農民たちが願ったのは安定した農業収入だったが、国が思い描いたのは 「武装開拓団」だった。 敗戦による満州からの逃避行はまさに阿鼻叫喚。子を失い、家族を失い、 やっとの思いで舞鶴港に辿りついた人たちを待ち受けていたのは、新たな 土地での開拓事業だった。 青森県下北郡六ヶ所村。開拓者たちが入植した一地域の物語は、熊笹に 覆われた土地を農地に変えることから苦労の連続だった。 酸性土壌の土地では農作物の豊富な収穫は望めない。借金は雪だるま 式に増えて行く。そして、度重なる国の農業政策の転換に翻弄される。 土地を手放し、農業を離れ、開拓地を去って行く者が増える。時は高度経済 成長期。地域の惨状に漬け込むように国家的事業の名の下、詐欺同然の 土地買収が進み、血の滲むような努力の末に開拓した部落は解散となる。 時代に、国に、農政に、弄ばれた人たちがいる。それは本書で取り上げれて いる地域に限らない。三里塚闘争の舞台となった土地も、戦後の引き揚げ 者たちが開拓した土地だった。 民草。国を信じ、従って来た人たちをこの国は草以上、人間以下に扱って 来た。忘れてはならぬ歴史である。
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