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傾く滝
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傾く滝
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商品レビュー
4.4
6件のお客様レビュー
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読んで30年以上経つのに、未だに折に触れて思い出す。(本筋とは全く絡みません…) 主人公である宮永直樹の隣人・弥平次には、居候がいる。妹を騙して死なせた男の瞼に、弥平次は「くろす」を刺青したのだ。キリシタン禁制のご時世、外へ出られなくなった男。閉じ込められている訳でもないのに、自害する心意気もなく、1日2つ与えられる握り飯で命尽きる日を待つだけ。 お屋敷暮らしで端の一室に置いてる…とかってんじゃない。職人暮らしの狭い空間で、四六時中憎悪の対象の気配、どうかするとその体温を感じるように接している生活。 妹が喜ぶ訳でもましてや帰って来る訳でもないのに。そこまでエネルギーを、自分の人生を注力するか。憎悪というよりは、もはや情熱に近い。ストックホルム症候群が生じるでもなく、弥平次の一生を蝕む、なんて暗い情熱。逃亡も折檻もなく、無為に時が流れていくだけ。どんなメンタルが二人を支えてるんだ、一体? こういう隣家を看過するってエピソードも、宮永の横顔に厚みを持たせていたんだって今更ながら気づく、今日この頃。
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終了日 2012・12・30、今年の帰省時に一気読み。実は長年探してて、ようやく出かけた先の古本屋でゲット。 以下、当時の日記から抜粋。 『とにかく壮絶、昼ドラ真っ青の愛憎劇でした。 いやーお腹いっぱい超楽しかった。やっぱりいいねえ、こういうのは。 同性愛をテーマにした一般書は趣旨替えって感じで新鮮。 特に少し年代が古いものはさらにいいね。 こう、容赦がない。特に杉本苑子女史は鋭い。 宮永直樹という男の残忍さが非常に好ましかった。この媚びない、折れない、限りなくとらわれている感じがたまらないね。今時とかジャンルが違えば、きっと直樹は団十郎を想うようにでもなるんだろうが、彼の本質は全く違うところにある。貫き通してくれるのが逆に潔い。 逆に団十郎の危うさ、若さ、倒錯と狂乱っぷり。読んでいてこうも不快さといじらしさの同居する人物にも読者としてのめり込まざるを得ない。 重蔵と駒三の、これまたいじらしさ。この二人はどうしてこうもいい男に成長してもあんな悲しい末路に至ったかな。せめて駒さんが成功してくれればいいのだが。 だが一番アレなのは猿蔵の憎たらしさ。こう、随所にちりばめられた不快の塊が最後にああなるか!と驚きもしたし納得もした。もっと惨い死に方でもよかったよ。と、それくらいに重蔵と駒さんに感情移入してしまう。 結論:ドロドロ愛憎まみれの昼ドラ群像劇、ホモもあるよ!でも本質は人間の弱さとずるさを見据えた、重く、感慨深い一品。あるいは、一人の男に狂わされた江戸の歌舞伎界と、それぞれの執着の行く末。』
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若くして自殺した美貌の八世市川団十郎の破滅的な恋の苦悩と悦楽。恋人は仇持ちの浪人。・・・辛いけど最高に面白いよ。 杉本苑子の本がほとんど絶版なのは本当に悲しい。
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