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山猫
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山猫
¥990
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商品レビュー
3.5
11件のお客様レビュー
天体観測と家庭の問題。さらに世相と世代の移り変わり。天体の変わらなさと、不可解な実生活。ロマンスのささやかさ、軽いさざめき。三姉妹と剥製となった犬は最後の場面で時代の変化を感じさせる。 つまり天体は変わろうとしなくても、水準を維持出来るように見えるが、実生活では、水準を保つとはど...
天体観測と家庭の問題。さらに世相と世代の移り変わり。天体の変わらなさと、不可解な実生活。ロマンスのささやかさ、軽いさざめき。三姉妹と剥製となった犬は最後の場面で時代の変化を感じさせる。 つまり天体は変わろうとしなくても、水準を維持出来るように見えるが、実生活では、水準を保つとはどういうことかについてだが、そこの変化と何もしなさ加減の、そういう話である。したがって山猫の紋章は、自然に任されたわけである。
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旅をする前は赴く地にまつわる本や映画を楽しむことを習慣としているが、シチリアといえば、ゴッドファーザーの次に浮かぶのはこの作品だろう。以前に映画も観たことがあるが、何となく印象はあまり残っておらず、新鮮な気持ちで読んだ。 お決まりの、ある大貴族の斜陽の物語だが、老当主に大局的な悲...
旅をする前は赴く地にまつわる本や映画を楽しむことを習慣としているが、シチリアといえば、ゴッドファーザーの次に浮かぶのはこの作品だろう。以前に映画も観たことがあるが、何となく印象はあまり残っておらず、新鮮な気持ちで読んだ。 お決まりの、ある大貴族の斜陽の物語だが、老当主に大局的な悲愴感はほとんどなく、半ば自ら進んで一族を「過去」へと葬る様が印象的だった。自身を歴史の大きな流れの一部とあまりに理解してしまっているが故の諦念と一種の怠慢は、作者自身が持っていたものだろうか。生き生きとした次世代の代表である甥夫婦も、不幸な結婚生活の示唆があちこちに散りばめられている。晩年のコンチェッタには、どうせ不実な男だから今になって後悔することは何もないと声をかけてあげたい。
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1860年から本格的に始まるイタリア統一に向けた国内の動揺を背景に、山猫が家紋の貴族サリーナ公爵が没落していく過程を描く。 特に革命側に付いた甥の存在が、公爵に新しい時代の到来を痛切に思い知らせた。 しかも甥は公爵の娘でなく、統一の上昇気流に乗る新興階級であり素封家ともなった一族...
1860年から本格的に始まるイタリア統一に向けた国内の動揺を背景に、山猫が家紋の貴族サリーナ公爵が没落していく過程を描く。 特に革命側に付いた甥の存在が、公爵に新しい時代の到来を痛切に思い知らせた。 しかも甥は公爵の娘でなく、統一の上昇気流に乗る新興階級であり素封家ともなった一族の娘に惹かれ、彼女と結ばれる。 貴族という権威が失墜するも、公爵はそれを時流の本筋と見做し、新しい人々へ道を譲る。 彼の実のある気高さと颯爽としたあり方が、哀しくも清々しく映った。 死がある限り希望がある、公爵のこの信念と、天体観測で見る星の永遠性が、彼の誇りの支えとなったように思われる。 それらを持たず、虚栄にしがみついた彼の末裔の行く末は、無残であり悲惨だった。 本作は、ブッツァーティーの『六十物語』、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』と並び、イタリア文学界最高の賞であるストレーガ賞を受賞しており、イタリア人が一番好きな本として挙げることがあるというので興味を持った。 読み終えて胸に残るのは、諸行無常、盛者必衰、あと滅びの美学といった感覚。 桜好きな日本人に馴染みやすいように思う。
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