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比較文化論の試み
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比較文化論の試み
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「日本人とは何か?」を追求する山本七平。1921年に生まれる。1942年青山学院卒業即日入営。1944年ルソン島に派遣される。1947年日本に帰るという軍隊経験を持つことで、日本の歴史を見つめ、西洋の思想形成について考察し続けた。 本書は、西洋の思想から見て、日本人は何か?を...
「日本人とは何か?」を追求する山本七平。1921年に生まれる。1942年青山学院卒業即日入営。1944年ルソン島に派遣される。1947年日本に帰るという軍隊経験を持つことで、日本の歴史を見つめ、西洋の思想形成について考察し続けた。 本書は、西洋の思想から見て、日本人は何か?を論じている。1974年の発行であるが、現在にも通用する視点だ。「日本人はひとりよがりで同情心がなかった。それは、日本文化というものが確立していなからだ。日本文化というのは普遍性がなかった」という小松さんという人の意見を考察する。 日本人は、他との文化的接触をして自分が色々な行動をした場合に、反省することができなかった。精神的な弱さとひとりよがりに加えて文化の確立がなかったと著者はいう。 宗教に対するアンケートで、「自分は宗教を必要としない。そういうものがなくても生きていける。しかし、だからと言って、否定しようと思わない」という考えに、「自分がなぜそう考えるのか?」という問いに「なぜって、別に理由はないですよ。そう考えるから、そう言っただけです」 これは自分の考えを歴史的に把握しなおすことをしないことからきている。自分の考えを言葉にしきれないことも大きな要因だ。 塚本虎二は、日本の聖書学の基礎を作った人で、冬にあまりにも寒いので、ひよこにお湯を飲ませて死なせたという。「これが日本人の親切だ」自分には善いと思って行動して、相手のことを考えない。日本がフィリピン人に対して、アジアの解放と言っていたが、誰一人「あなたたちのために私たちができることがありますか」と聞いた人はいなかった。これは同情ではなくひとりよがりなのだ。 日本人は、「あなたのためを思ってやっているのに何をいうか」という言葉が出てくる。そうだから、アメリカやソビエトの国の人は日本人とは交渉ができないということになる。 基本の問題として、日本人はどういう考え方で何を前提としてどうやって生きているのかっていうことを、自覚し直して、相手に相手の理解できる論理で説明する以外にない。自分の考え方を再把握し直すことだという。要するに、同一価値観ではなく、多様性社会に突入しているからだ。 民族によって、「臨在感」が違う。常識つまり共通の感覚、感じ方は、理屈にならない感じ方、言葉にしにくい感覚。これをどう言葉で説明できるか。日本人は感じ方の違いを無視する。感じながら理由を考えない。 「ヨハネ福音書」の「はじめに言葉(ロゴス)あり」「はじめに秩序あり」というのが西欧諸国の考え方の基底をなしている。そうであるから、普遍性を持つ。「聖なる場所」に行くことで臨在感が生まれる。ユダヤ人は聖地意識であり、イスラム教徒も同じ聖所、メッカに行くことを一生の願いとした。日本人には場所に対する臨在感はなく、自分の家の中に引き入れる。それが仏壇である。 また、自然(じねん)に対する考え方も「天然自然に従っておればよい」と考える。そして輪廻転生の考え方に繋がっていく。全て自然に行っておれば良いと考える。 臨在感の特色把握と歴史観的把握をすること。つまり「こういう事実がある」と「なぜそうなったか」という二つの視点で考えることだ。 西欧では、正統と異端という対立概念がある。対立概念があると対象を確実に捉えられる。日本は、善と悪に分けるだけで、対立概念となっていない。 言葉で説明しきれないということに甘んじているがゆえに反省もきちんとできないという指摘は随分と痛いなぁと思う。自分の立っているところの歴史観的把握という作業は重要だと思った。
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『日本文化ってのは「普遍性がなかった」』 『たとえば、左翼と右翼という形で、あるいは与党と野党という形で対象をとらえる。 しかし、対象はあくまでも“一”で、対立概念というものは、その極限にあるものは究極的には“一”であるということが絶対の前提になっている考え方なんです。』 ...
『日本文化ってのは「普遍性がなかった」』 『たとえば、左翼と右翼という形で、あるいは与党と野党という形で対象をとらえる。 しかし、対象はあくまでも“一”で、対立概念というものは、その極限にあるものは究極的には“一”であるということが絶対の前提になっている考え方なんです。』 納得すぎて、膝をうちぬいた。
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「自分が何故そのように考えるのか」ということを説明できるかどうか。そんなこと考えたこともなかったのですが、異文化コミュニケーションではそれが大切ですし、仕向け地向けのテストでもきっと「その国の人は何故そのように考えるのか」ということを説明できるかどうかが大きな分かれ道になると思い...
「自分が何故そのように考えるのか」ということを説明できるかどうか。そんなこと考えたこともなかったのですが、異文化コミュニケーションではそれが大切ですし、仕向け地向けのテストでもきっと「その国の人は何故そのように考えるのか」ということを説明できるかどうかが大きな分かれ道になると思いました。 本書は、99ページしかない文庫本で、たぶん私が持っている文庫本の中で最薄です。iPhoneよりも薄いです。 だからあっという間に読み終わりますが本当に深くてよい本です。テスト関係者に特に読むことをお勧めしたいです。
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