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サンタクロースが二月にやってきた えほんのもり

今江祥智【文】, あべ弘士【絵】

定価 ¥1,430

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 文研出版
発売年月日 2007/11/29
JAN 9784580820111

サンタクロースが二月にやってきた

¥220

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2024/02/18

 今江祥智さんの物語と、あべ弘士さんの絵に、このタイトルと来たら、以前読んだ『しもやけぐま』と何か関係するものがあるのか気になり、今月中に読まねばと、手に取ることに。  本文初出は、『母の友(1961年)』ということだが、そうした時代を全く感じさせない物語の内容に、今江さんの『...

 今江祥智さんの物語と、あべ弘士さんの絵に、このタイトルと来たら、以前読んだ『しもやけぐま』と何か関係するものがあるのか気になり、今月中に読まねばと、手に取ることに。  本文初出は、『母の友(1961年)』ということだが、そうした時代を全く感じさせない物語の内容に、今江さんの『真面目で軽みにぬける』を目指してきた作家性を実感させられ、そのユーモア混じりの物語の中にも確実に潜む、チクッとするような、浅いけれども中々治まらない痛みとの対照性には、誰もが、どこかで体験してきたような過去の記憶をくすぐられそうで、そこに、人それぞれの共感を得られるのではないかと思われた。  序盤は、冬になった動物園の檻の奥の、暖房の効いた部屋で仲良く過ごしている、ライオンの家族模様や、その天井を突き破って落ちてきた、サンタクロースとの出会いの場面や、その意外性のある理由からも感じられた、ほのぼのとした温かいドタバタ劇として、物語は楽しく展開される。  しかし、サンタクロース自身の何とかしてやりたいという思いとは裏腹に、その結果が、まさかというような空回りぶりとなる場面を皮切りに、物語を覆っていたユーモラスさは、次第にシリアスさへと変わっていくのだが、サンタもライオンの家族も、決して誰一人悪くはない。ないのだけれども、それは旅に於ける貴重な出会いとも思われた、ひとときの交流が、何をきっかけに、あっさり終了してしまうのか誰にも分からないように、きっと上手くいくと思ったことも、時に思い通りのいかないことだって、人生にはある。それに、向こうだって悪いことをされたとは思っていないだろう、でも・・・といった、それは、あくまでも自分自身の人生に於いて、何度も体験するような、ちょっとしたことであり、大きな傷ではないのだけれども、何か忘れられないものも心に刻まれてしまった、そんなビターな思い出にも似たものを感じられた哀愁感が、却って私の胸を締め付けたのは、そこにサンタクロースの人の良さがあったからであり、そうした人間の複雑な思いが生み出す、ささやかな感情を繊細に描き出している点に、今江さんの生真面目さが表れているのだと思った。  そして、前回読んだ『しもやけぐま』と、本書の繋がりについてだが、正直なところ、どちらにも捉えられそうな感があり、前者は1995年作で、本書の物語は1961年ながら、絵は、本書の発売された2007年だと思われることから、あべさんにとっては12年ぶりとなるが、私には、何故今江さんが、再度あべさんに絵をお願いしたのか、よく分かるような気がする。  それは、あべさんの、外から見たままの写実的な描写ではない、彼らの内面が表に現れたような、動物のやわらかい描き方にあるのだと思い、本書の場合は、ライオンの夫婦とその三頭の子どもたちを、一枚の見開きの中で、どのようなバランスで描くかによって、それぞれの感情の細やかさを活き活きと表しているようで、それが今江さんの文章とも見事に合致していたのが印象深い。  また、それとは違った味のある、あべさんのサンタクロースは、眼鏡を描いただけで、その奥の目は描いていないにも関わらず、どこか憎めない愛嬌のある様を感じさせるのも、その丸々としたやわらかい描き方に、ちょっとした動きを加えることで生み出される、内に抱いた人間性や思いが垣間見えるからであり、それは愛嬌のある温かさを効果的に演出する反面、真逆の表現も、切ないほどに効果的に映し出しており、そこには今江さんの文章が無くとも感じられた、暖色系のライオンとは対照的な、寒色系のサンタクロースの内なる思いを、如実に表していたのである。  そして、そんな思いを静かに映し出しているのが表紙の絵であり、その青のグラデーションで描かれた、空から舞い落ちる雪を受け止める、サンタクロースの赤には、どこかイメージとは似つかわしくない、物寂しさが漂っているような心許なさを思わせる、そんな雰囲気を、文章や表情が描かれていなくても察せられるような感じに、おそらく今江さんも惹かれたのではないかと思い、そんな文章と絵が共に語っている絵本だからこそ、より染みる思いを抱かせるのには、もしかしたら、ビターどころではない深い哀しみが宿っているのかもしれないが、それでも私は、最後の見返しに描かれた、ライオンの家族の優しさを滲ませた眼差しを信じたいと思う。

Posted by ブクログ

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