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十二世紀のアニメーション 国宝絵巻物に見る映画的・アニメ的なるもの

高畑勲(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 徳間書店
発売年月日 1999/03/31
JAN 9784198609719

十二世紀のアニメーション

¥2,255

商品レビュー

4.8

8件のお客様レビュー

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2020/08/12

現在岡山市で開かれている「高畑勲展」の図録で紹介していたので紐解いた(展覧会も図録も大変面白いのだが、いかんせん紹介できない)。本書はたいへんな労作。絵巻物に、マンガ・アニメの源流があると説いたものである。なんだ、そんなことは良く言われていることじゃないか、と思った貴方、違います...

現在岡山市で開かれている「高畑勲展」の図録で紹介していたので紐解いた(展覧会も図録も大変面白いのだが、いかんせん紹介できない)。本書はたいへんな労作。絵巻物に、マンガ・アニメの源流があると説いたものである。なんだ、そんなことは良く言われていることじゃないか、と思った貴方、違います。こんな風にキチンと分析した書物は、それまで出版されなかった。実物を見せながら話を展開しないと、話が始まらないからである。本書は横開き多色刷りの豪華本であるが、著者が有名なために3600円の安価で出版できた。 日本のマンガとアニメを高畑勲はとりあえずこのように定義する。 「おもに輪郭線と色面で描かれた さまざまな絵を並べ(平明な絵で描かれ) それに言葉をそえて 時間とともに(コマ割やフィルムの流れとともに) お話をありありと語ったもの」 これはまさに中世からの絵巻物や絵とき、江戸時代の草双紙や浮世絵、覗きからくり、からくり幻灯芝居に共通する特徴である。しかも、日本には、子供から大人まで、庶民の生活や立ち振る舞いを好奇心いっぱいに活写した絵が多く、そういう絵は、ちょうどマンガを読むときのように、描かれた内容を追いつつ、画面に眼を近づけて細部の「絵を読」んではじめて面白さがわかるように描かれた、という。 もちろん、日本で花開いたマンガやアニメは、このような文化伝統を学んで作られたのではない。(←ここをはっきりさせているのは高畑勲の立派な所)海外から多くを学んで出発したものだ。ただ、日本において、何故こんなにもマンガやアニメが盛んになったのか、「その源泉をたどれば、やはり絵と言葉で語るという、私たちの文化的な好みと欲求の伝統に行き着くことになります」。 日本人は何故こんな文化的嗜好が発達してきたのか?本当のルーツは、日本語の独特の言語体系だという。漢字と訓読み、カタカナとひらがな、漢字かな混じり文を発明したのが日本語である。それによって、日本人は文字を視覚的な「絵」として認識してきた、と高畑勲はいう。13ヶ所に渡りその証拠を挙げているが、例えば、日本人は読みは分からなくても意味がわかる漢字をいくつも「絵」として知っている、名前を漢字の選択によって視覚的なイメージで多様化した(征子、雅子、麻紗子、まさ子。漫画、まんが、マンガ)、オノマトペの豊富さ、語り絵は文盲に対する絵とき用ではなく識字層の楽しみのためにまず制作された、等々。 そうして、高畑勲は「信貴山縁起絵巻」「伴大納言絵詞」について、そのアニメ的手法を解説する。その緻密さは、正に一つのアニメ映画を監督するくらいである。「シークエンス」「シーン」「クローズアップ」「フェイドアウト」「ズームイン、パン」などの用語を多用して、十二世紀に絵巻物が一挙に世界に例を見ない「時間の表現」「視覚効果」を自覚的に狙ったすごい映像作品である事を見せる。 この2つの絵巻物と「彦火々出見尊絵巻」「鳥獣人物戯画」は、全編を縮小版であるが解説している。有名場面を知っている人は多いが、全編をカラー絵を見ながら解説されたのを読んだのは初めて。それだけでも価値がある。 高畑勲は、1人の絵師の仕事じゃない。脚本家やプロデューサーに似た集団的な作業の賜物だと喝破する。その他、ここで書いている独創的な意見は多い。 彼の指摘の一つ一つが美術史的に大発見だと思うのだが、素人発言としてあまり注目されてきていないのではないか?とさえ思った。

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2020/02/19

 俎上に上げられるのは、『信貴山縁起絵巻』、『伴大納言絵巻』、『彦火火出見尊絵巻』、そして『鳥獣人物戯画』の4巻。絵巻の写真の下に、如何にもアニメ監督らしい絵解きが。こんな具合だ。『信貴山縁起絵巻』「飛倉の巻」の一部、「霞のなかにロングショットの深山が姿をあらわすと、ズームインし...

 俎上に上げられるのは、『信貴山縁起絵巻』、『伴大納言絵巻』、『彦火火出見尊絵巻』、そして『鳥獣人物戯画』の4巻。絵巻の写真の下に、如何にもアニメ監督らしい絵解きが。こんな具合だ。『信貴山縁起絵巻』「飛倉の巻」の一部、「霞のなかにロングショットの深山が姿をあらわすと、ズームインしつつオーヴァラップ、その奥にある(はず)の右面構図の住房を(見出す)」。撮影現場にいるような不思議な臨場感がある。「あとがき」にこうある。「私の夢は、(中略)『あそびをせんとや―日本伝統絵画のなかの子どもたち―』といった大判画集を編むことである」。生前にそうした本は出していない。ただ、アニメ『かぐや姫の物語』がある。ひょっとすると高畑はアニメの形で夢を実現していたのかもしれない。

Posted by ブクログ

2019/12/19

 あの高畑勲が,日本の12世紀に書かれた絵巻物を詳細に分析して,それらがアニメーションとしての先見性を持っていることをわかりやすく教えてくれます。  これだけジックリと絵巻物を見たことはなかったので,とても楽しい時間を過ごさせてもらいました。「なるほど,そういうふうに見ると,確か...

 あの高畑勲が,日本の12世紀に書かれた絵巻物を詳細に分析して,それらがアニメーションとしての先見性を持っていることをわかりやすく教えてくれます。  これだけジックリと絵巻物を見たことはなかったので,とても楽しい時間を過ごさせてもらいました。「なるほど,そういうふうに見ると,確かに,そう感じるな」と思うことばかりです。絵巻物の特徴として,〈右端の方から少しずつ開いて絵を見ていく〉ということになります。そこで,描き方次第では,映画を見ているような気分にもなるわけです。  〈原因から結果が見える〉という当たり前の展開はもちろんのこと,〈先に結果が見えていてだんだんと原因につながっていく〉という展開もあります。左に行くに従って,どうしてそうなったのかが見えてくるというわけです。  また,絵巻の中の「異時同図」というテクニックについても,結構いろんなパターンがあることも教えてくれました。  異時同図とは,次のようなことです(ネットより転載) …これら画面形式,画態はしだいに混じり合い,多様な絵巻表現を生み出してゆく。また絵巻にしばしばみられる構図法としては,屋根や天井を取り去って室内を俯瞰するいわゆる吹抜屋台や,同一画面上に次々と変化する事象を円環的に描くといった異時同図法があげられる。 (「絵巻」『世界大百科事典』より)  もう一度読みたいな。でも図書館から借りたので,返さないとな。

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