- 書籍
- 書籍
大人の友情
商品が入荷した店舗:0店
店頭で購入可能な商品の入荷情報となります
ご来店の際には売り切れの場合もございます
お客様宅への発送や電話でのお取り置き・お取り寄せは行っておりません
大人の友情
¥220
在庫なし
商品レビュー
3.6
11件のお客様レビュー
臨床心理学者で宗教や哲学の思考を重ねる作者の本なので漠然とした期待と親しみを持って読み始めた。 読み易く衒わない論調のエッセイで共感することが多く爽快な読後感に包まれた。 普段の人間関係で気になることの多い、よくあることを専門的見地から易しい言葉で誠実に解き明かす。 友人とは「夜...
臨床心理学者で宗教や哲学の思考を重ねる作者の本なので漠然とした期待と親しみを持って読み始めた。 読み易く衒わない論調のエッセイで共感することが多く爽快な読後感に包まれた。 普段の人間関係で気になることの多い、よくあることを専門的見地から易しい言葉で誠実に解き明かす。 友人とは「夜中の12時に、自動車のトランクに死体を入れて持ってきて、どうしようかと言ったとき、黙って話に乗ってくれる人だ」とユング派の分析家アドルフ・ブッケンビュールの祖父が言う、から始まる。 友人関係は「虫が好かぬ」「馬が合う」の如く無意識的なものであり、直接的な利害関係や意識的打算とは重ならず、地位・財産・名声でもなくお互いに存在を認め合っているというそのもの。友情を支えるものは目的でも理想でもなく「お互い、生きててよかったな」というもの。青山二郎が対談で親友の小林秀雄を泣かせてしまう話は印象的で、どんな人であれ心の深層は闇の世界であり、関係が深くなることは、その人の影の世界も知ることでそこに触れられるとあの小林でも涙を流すということだ。 丸谷才一の出淵博に対する弔辞も凄い、「故人に対する深い感情が示されつつ、文学者らしい抑制がきいていて、生の感情によって他人の心を騒がせない節度が守られている。」と抑制・節度が心を打つ、と言う。 「ついにゆく道とはかねて聞きしかど きのうけふとは思はざりしを 伊勢物語」を「‥‥聞きしにまさるこの花道ぞ 隼雄」と読み替えて、死について白洲正子と語り合う。 お互いの距離について、調節や操作にそれほど気をつかうことなく、相手と共にいる、あるいは「あの人がいる」と思うだけで、ほっとできるような関係がひとつでもあれば、その他の付き合いは楽になるであろう‥‥「自立している人は、適切な依存ができてそのことをよく認識している人である」等々身につまされて納得できる言葉が続く。 田辺元と野上弥生子の友情を通した晩年の恋愛の話も秀逸だ。彼らの和歌の遣り取りは一流の繊細さで展開され、感情の逸脱を防ぐ「断念の構図」がある、と言う。 付き合いや裏切り、贈り物とお返し、ホモの話、関係の踏み込み等々いろいろなことを俎上にあげて思考し無駄のない的確な言葉での表現は流石である。 人生経験を経てこそ、しみじみと共感できる内容であり受け止める人の考えの深さによっても印象は異るであろう。 道徳の教科書のようであった。
Posted by
図書館本。人間関係は適度な距離間がすべて。それに尽きるのだろうなと思いました。とにかく息子たちには、子どものころからあらゆる人間関係を経験して、免疫をつけておくことが大切だよ!と教えていこうと思います。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「いろんな人間関係の背後で、「友情」ということがはたらいている」p,11 とあるように、夫婦も恋人も同僚も師弟もどこかで友情に近い気持がその関係を支えていると思う。 その友情についてのトピックが多岐に渡る。 人以外への友愛の話、同一視、贈り物、裏切り…… 「欲しいと思っても、なかなかできないのが「友人」だ、とも言えるのではなかろうか」p,12 一生懸命努力して友だちができると思っている人もいる。できたら有難いもの。 「私はかつて、ユング派の分析家、アドルフ・グッゲンビュールの「友情」についての講義を聞いたときのことを思い出す。そのとき、彼は若いときに自分の祖父に「友情」について尋ねてみたら、祖父は、友人とは、「夜中の12時に、自動車のトランクに死体をいれて持ってきて、どうしようかと言ったとき、黙って話に乗ってくれる人だ」と答えた、というエピソードを披露してくれた」p,13 頭ごなしに叱るでも、庇うわけでもなく、無条件に話を聞こうとする/してくれる関係。話に乗って何とかしようという姿勢も感じられる。深い信頼関係。 実際には難しくても理想を追うことはできる。という話がp,39にある。
Posted by