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夜の蟻 ちくま文庫

高井有一【著】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 筑摩書房/
発売年月日 1993/04/24
JAN 9784480026972

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2013/07/03

 ものすごくいいものなのだけれども他人に勧められない、という本があって。 「『夜の蟻』いいよォー、すごいよォー」 「へえ、どういう話なの?」 「会社を定年退職したサラリーマンが家を二世帯住宅にしたりしてだんだんと第一線から退いていく話」 「あ、うん、こ、こんど読んでみる...

 ものすごくいいものなのだけれども他人に勧められない、という本があって。 「『夜の蟻』いいよォー、すごいよォー」 「へえ、どういう話なの?」 「会社を定年退職したサラリーマンが家を二世帯住宅にしたりしてだんだんと第一線から退いていく話」 「あ、うん、こ、こんど読んでみるね?」  といって、読まれることはないのであろう。  でも、いいものです。  文学です。  文学、所謂純文学とエンタティメントの境界がなくなったといわれて久しいのだけれども、そもそも文学を「純」にしなきゃいけない理由ってなんなんだろうか。ということを考えたときに、結局は「純」なる文学(と、思しきもの)を求めようという欲求がどっかしらんにあるということなのです。求めたところで心が温かに成るわけでも、幸福感に満たされるわけでも、人生のヒントになるわけでもない。ただ、その文学の質感に圧倒される。「圧倒」は言葉足りずかしらん。いやでも、文学の質感に突き飛ばされて椅子から転げ落ちる。それがたとえ、定年退職したサラリーマンのその後であったとしても、です。  「しあわせ」も「絶望」も、結局は圧縮された言葉なんでしてね。我々の日常にある一種の感情を、小説というかたちで再現しきったとき、文学はその職能の一端を果たしたといってもいいのではなかろうか。  なかなかメジャーに取り扱われることはありませんが、現行の日本語で難なく読める「文学」の理想系のひとつは、この『夜の蟻』だと思います。

Posted by ブクログ

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