初読みの作家さん。 作者は海上自衛隊入隊後、歴任を重ねて海上自衛隊の特別警備隊(特殊部隊)の創設に携わった経歴を持つらしい。 物語はフィクションだが、その経験からの着眼点がリアルで自衛官達の使命が凄く伝わってくる作品だった。 フィクションとはいえ現実にも起こりそうな話であり緊張感が素晴らしい。 同時進行する政治の話、外交の話も妙にリアルで欲と保身と体裁の入り交じった汚ならしさを見事に描かれている。 そういう国際的、政治的な視点も混ぜる事で、現場の特殊部隊の隊員達の素晴らしさが特に伝わってくる。 打算の域のない実直な任務活動。 自衛官の使命、決死の覚悟、不退転の決意、素晴らしすぎる。 自衛隊が軍隊ではないという事実にも触れ、集団的自衛権や地位協定等の問題も連想させられる。 また立場上、心構えと義務だけで存在している組織って一体？ 曖昧すぎる、条約と憲法と国際的立場からずっと曖昧なままで、いつまでそうしているのだろうと感じる。 世界的規模で生じる危機がなければ何も改正されないのだろう。自分も含め国民もそういう意味では無頓着に日々を過ごしすぎだと改めて考えさせられた。 日本の平和と独立を守る為の自衛隊員達には有事の際にはこの作品のように力強く守っていただきたいと強く願うし、国民の精神的支柱として心強い存在でいてほしい。 右翼だとか戦争論だとか危険思想だとかの話ではない。 色々とおかしすぎる、それを作者はこの作品を通じて炙り出している。 自主防衛、ただただ自分達の国を自分達で守る、当然の道理の話だと感じた。 経験者だからこそ描ける、経験者じゃないと描けない凄い作品。 素晴らしい。