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鉄条網の世界史 角川ソフィア文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | KADOKAWA |
発売年月日 | 2019/01/24 |
JAN | 9784044004545 |
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鉄条網の世界史
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鉄条網の世界史
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商品レビュー
3.8
5件のお客様レビュー
鉄条網の歴史を通してみる世界史の本。 前情報もなくタイトルに対する興味だけで買って読みましたが、想像以上に深い。 胸の悪くなるような描写もありましたが、知らないといけないことだった。読んでよかったです。 最初は農産物や家畜の為に使われていた鉄条網が、やがて戦争の道具となり、人種...
鉄条網の歴史を通してみる世界史の本。 前情報もなくタイトルに対する興味だけで買って読みましたが、想像以上に深い。 胸の悪くなるような描写もありましたが、知らないといけないことだった。読んでよかったです。 最初は農産物や家畜の為に使われていた鉄条網が、やがて戦争の道具となり、人種や民族で人を隔離するために使われるようになることに、人の悪意というのがいかに強いかが見えるような気がします。 鉄条網の中と外で、生態系や植生まで大きく変わってしまうというのは初めて知りました。いかに人の手が入ることが自然や動物にとって影響を及ぼすかを思い知ると辛いです。
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このようなテーマ限定型の通史は、海外の出版物ではよく見るが、日本では珍しいように思う。その意味ではついに和製が出てきたかという意味でありがたいし、切り口も良いと思う。読んでいて面白かった。 ただ、あんまり日本と関係ないね、というところはある。日本と関係付ける必要がそもそもないの...
このようなテーマ限定型の通史は、海外の出版物ではよく見るが、日本では珍しいように思う。その意味ではついに和製が出てきたかという意味でありがたいし、切り口も良いと思う。読んでいて面白かった。 ただ、あんまり日本と関係ないね、というところはある。日本と関係付ける必要がそもそもないのだけどさ。 十分面白い本だったのだけど、横断切り口型通史としてみてみると、途中から収容所の歴史になってしまったところはある。それが悪いってわけではないのだが、なんとなく意外性がない。 こういう本がこれからもっと増えればいいのにな。
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○○の歴史、文化史、世界史といった本はたくさんあるけれど『鉄条網の世界史』というタイトルには、かなり虚をつかれました。いや、まあ何かしら歴史はあるだろうけど、そんな一冊の本になるほどなのか、と。 鉄条網は元々は、家畜に花壇を荒らされるという妻の悩みに応えた夫が発明したそう。 そ...
○○の歴史、文化史、世界史といった本はたくさんあるけれど『鉄条網の世界史』というタイトルには、かなり虚をつかれました。いや、まあ何かしら歴史はあるだろうけど、そんな一冊の本になるほどなのか、と。 鉄条網は元々は、家畜に花壇を荒らされるという妻の悩みに応えた夫が発明したそう。 それが広まったのはアメリカでの西部開拓時代。時の政府の意向や法律の改正もあり、多くの入植者が西部に訪れ、農地を開拓していった時代。 広い放牧地を囲い込むため、鉄条網のニーズが西部で増す一方、元々西部で生活をしていた、牧場主やカーボーイと、入植者たちとの対立は激化し…… 広い土地で自由に放牧をしていた元の住人と、鉄条網で土地を囲い込み、その中で家畜を育てる入植者。その対立の象徴としての鉄条網。やがて古くからあった放牧やカーボーイといった文化は姿を消し…… そして土地の農地利用は加速し、それはやがて土地を涸らし、乾燥した大地はやがて大きな砂塵を巻き起こしたり、生態系も鉄条網の内と外で変わってしまう事態に。 本の中に鉄条網が張られた柵の内側と外側を対比した写真があるのだけど、これはインパクトが強い。 内側は家畜が草を食べるため、ところどころが裸地になっているのに対し、外側は背の高い草が生えている。草食動物やバッタなどは、実は意外と内側の方が多いそう。 なぜなら、外側は生態系が豊富な分天敵も多くて、一定以上増えられないからだそう。そして、こうした生物たちも草を食べるから、さらに土地は痩せていく。 そして鉄条網は、家畜から人に対して使われるように。戦場では鉄条網をしきそこで足止めをくらった敵に対し、容赦なく機関銃を掃射する戦術が取られます。 日露戦争で旅順攻略の際の死者が凄まじいかったのも、この戦術に日本軍が手を焼いたから。『坂の上の雲』でも、旅順攻略の話は出てきますが、細かいところは忘れていました。なんとなく「旅順やべえ、乃木やべえ」という印象だけは残っていたのだけど、ああそういうことだったのか、と妙に納得。 鉄条網や機関銃の登場により白兵戦から、塹壕戦に変わっていった戦闘。塹壕での膠着状態が続く一方で、兵器は発達し死傷者は増加。鉄条網対策のため戦車が開発され、それがまた兵士たちに絶望を植え付ける。そして鉄条網は、現代の戦争でも使われ続けています。 そして戦場での鉄条網が紹介された後に、出てくる話は強制収容所。 強制収容所となるとナチスとシベリア、あとは太平洋戦争時の日系人くらいしか、あまり強い印象がなかったのですが、本を読んでると次々出てくる、出てくる……。 戦争、人種、民族対立から生まれた強制収容所。もちろんそこを囲むのは鉄条網。家畜を外に出さないための鉄条網が、いつの間にか人間に向けて使われるというどうしようもない現実。 こうして読んでいると、鉄条網は対立の象徴という気もします。その後紹介される事例は、東西ドイツにパレスチナとイスラエル。そして今なおアメリカに残る先住民差別。 最後の第8章が「よみがえった自然」とあるので、最後に明るい話かと思いきや、これもシニカルというか、皮肉しか思えない……。 韓国と北朝鮮の軍事境界線であったり、チェルノブイリ、そして福島原発事故の避難区域は人がいなくなり、希少動物が戻ってきたり、自然が再生したりしているそう(最も放射線の影響については、なんともいえない状況ですが) こうやって考えると、人間って人間同士でも対立し、自然とも共存できていないのだなあ、と考え込んでしまいます。 鉄条網が使われない世界が、たぶん理想の世界なのだろうな、という気がします。でも、今の人類にはまだまだ遠そうな未来だと、考えてしまいました。
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