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ピアノ・レッスン 新潮クレスト・ブックス

アリス・マンロー(著者), 小竹由美子(訳者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 新潮社
発売年月日 2018/11/30
JAN 9784105901547

ピアノ・レッスン

¥990

商品レビュー

3.9

8件のお客様レビュー

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2023/12/19

それなりに生きてくると色々な記憶が澱のように溜まってくる。短編小説の題材に仕立てられるものの一つや二つはないものかと底をさらってみると、何気ない日常の延長に過ぎないが、いまだに鈍く疼く断片を思い出す(なんだか『仕事場』のミスター・マリーみたいだ。くわばら、くわばら)。 “平凡な...

それなりに生きてくると色々な記憶が澱のように溜まってくる。短編小説の題材に仕立てられるものの一つや二つはないものかと底をさらってみると、何気ない日常の延長に過ぎないが、いまだに鈍く疼く断片を思い出す(なんだか『仕事場』のミスター・マリーみたいだ。くわばら、くわばら)。 “平凡な日常を送る人々のかけがえのない瞬間を描く”と評されるアリス・マンローの作品と、僕の個人的な屈託を巡る思い出は、さて同じかと問えば決定的な違いに気づかされる。 マンローが掬い上げた物語には、ひとときの間に沢山の思いが幾重にも層をなして交差する。覗き込む角度によって描かれた世界は色を変える。 “要約しようとしてもこぼれ落ちるもののほうが多いストーリー”という、翻訳者のあとがきは言い得て妙だ。 『ウォーカーブラザーズ・カウボーイ』は、すごく好きな一篇。 ウォーカー・ブラザーズ商会の訪問販売員である父親は、小さな娘と更に幼い息子を、二人の気晴らしのためにルートセールスに同行させてあげる。 好き好んでやっている仕事ではない。訪れた家で屈辱を味わうこともある。まさに今日はそんな日だ。ちょっとおどけた冗談に変えて笑い飛ばすこともできるけど、妻の前ではそうしたくない。 家庭も妻も大事だが、自分自身を晒せる場所じゃない。 独身時代に親しかった女性のノラに会いに行くことにしたのは計画的ではなかっただろう。こんな日は、まっすぐに帰る気にはなれなかった。子供連れなのはセーフティーネットだ。彼女にも、彼自身にとっても。 四人は居間で歌い、彼女は娘と蓄音機をかけて踊り、楽しく過ごす ーもしかしたら、ありえたかもしれない、もうひとつの未来の擬似家族ー。 踊ろうよと彼を誘う彼女に、父親は“だめだよ、ノラ”と静かに告げる。危ういときは過ぎる。 この物語の語り手は、娘である少女だ。父親の心理描写がある訳ではない。 少女は、“弟と二人で外で遊んできたらどうだい”、という父親の言葉に込められた意味を汲めるほどには、ませてはない。だが、家路に向かう車を運転する父親の沈黙に、今日のことを話しちゃいけないと思うほどには大人だ。 少女が感じる漠とした不安を夏の夕べの空に仮託して締める最後の一文の見事さといい、短編小説の魅力が詰まっている。 『ユトレヒト講和条約』は、また全く違う読後感だ。ここには書かずにはいられない、そして読まずにはいられない切迫した感情と記憶の奔流がある。 家族を巡る昏い記憶は、互いを結びつけると共に越えられない断絶を作りだす。同じ記憶を共有する兄弟姉妹だからこそ決して言うことのない、だけれどもふと漏らす言葉というものが、確かに、存在するのだ。 思えば、記憶は登場人物以上に、風景と分かち難く結びついている。 僕もせっかくおぼろに思い出した、しがなくも大切な記憶を違う角度で見てみよう。また沈んで消えてしまう前に。あの日の空の色を思い浮かべながら。

Posted by ブクログ

2023/02/08

イラクサがとても良かったので、期待して読んだけど、イラクサには敵わなかった。本著は処女作のようで、そのせいか主人公達の遣る瀬なさが強烈に伝わって来る。著者が若いってこともあるかもしれない。 しかしながら、人が人と関わることで生じる摩擦、必ずしも仲が悪いわけでもなく、親しい間柄に...

イラクサがとても良かったので、期待して読んだけど、イラクサには敵わなかった。本著は処女作のようで、そのせいか主人公達の遣る瀬なさが強烈に伝わって来る。著者が若いってこともあるかもしれない。 しかしながら、人が人と関わることで生じる摩擦、必ずしも仲が悪いわけでもなく、親しい間柄にも生じるストレス、そういった表現が切々と伝わって来る。やはり巧みな作家だと思う。

Posted by ブクログ

2022/04/03

聞きながしてしまいそうな会話、見ても忘れてしまいそうな風景、そう言った日常の些細なことにフォーカスして拡大して心象を描いていると思った。多分いくつかは作者の体験や見て来た世界であるんだろうけど、短編の一つに書かれていた「感じやすい子」というのは作者自身のことだろう思った。

Posted by ブクログ

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