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モラルの起源 実験社会科学からの問い 岩波新書1654

亀田達也(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 岩波書店
発売年月日 2017/03/01
JAN 9784004316541

モラルの起源

¥330

商品レビュー

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16件のお客様レビュー

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2021/08/08

人文科学と自然科学の接続をめざす野心的な試みにも見えるが、どうも周辺分野の学説を浅く広く紹介するにとどまり、終盤では人文寄りの話に終止している。「実験」社会科学を掲げているものの、社会心理学では昔から実験はごく当たり前だしね。 最後通告ゲームの結果に見られるように、ヒトの社会行...

人文科学と自然科学の接続をめざす野心的な試みにも見えるが、どうも周辺分野の学説を浅く広く紹介するにとどまり、終盤では人文寄りの話に終止している。「実験」社会科学を掲げているものの、社会心理学では昔から実験はごく当たり前だしね。 最後通告ゲームの結果に見られるように、ヒトの社会行動にも進化的な基盤を持つ(=概ね人類共通)ものとそうでもないものがあるみたいなので、もっとその境界を探ったりしてくれれば面白そうなのに。

Posted by ブクログ

2020/12/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

たとえばミツバチの群れが集合知を実現している例から、ではなぜ人間社会では集合知が実現しないか(あるいは、しにくいか)についての考察があります。ミツバチの社会は血縁社会で、個人が生き抜けばよいというよりも群れが生き抜けばよしとします。よって、次の営巣地(ハチの巣の構築候補地)を探しその候補地を集合知でもって決定するとき、各々のミツバチは個人の利害なくフラットな目で候補地を判断するようなのです。そして八の字ダンスでのプレゼンを繰り返しながら、群れの多数決で決められた次の営巣地は、客観的に見てもベストなところに落ち着くのだそうです。他方、人間社会では「情報カスケード」と呼ばれる、無条件で他者の情報を優先する心理状態によってたとえばエラーである情報が連鎖してしまうことが多々あります。これは集合知ならぬ、その反対の集合愚にあたるケースです。つまりミツバチにくらべて人間のほうは自分の目で判断していないから上滑りするような情報共有になってしまう。それも無自覚にそうだし、そのような傾向も強い。そのあたりを深掘りして考えると、人間は非血縁社会で生きているがゆえに、「まわりとは独立に、自分の判断で評価を下す」ことが当の本人にとって不利益になる可能性があり、その可能性が少しでもあるならば空気を読んでそれを避ける心理が働く、という機制の存在が浮かび上がってきます。つまり、ほんとうは実体のない「世間」というものへの意識が、人間社会での集合知を実現させにくくしている。本書では、「だから、それをやめよう」というスタンスではありません。人間のありようを深くまでみつめて、「そのうえでベターを考えられたなら」というようなスタンスでした。なので、啓もう的ではなく科学的な態度の本であって、それゆえに客観的に、それこそデリケートな概念である正義やモラルを考える地点に近づくことができるのです。 後半部では、「最大多数の最大幸福」を掲げる功利主義や「最不遇の立場を最大に改善すること」を掲げるマキシミン原則を扱います。著者としてはその折衷点を考えていく実用主義を探る方向へと光を投げますが、この折衷(妥協)の落とし所がむずかしいんですよね。ある意味、おおざっぱな見立てをする人には「ダブルスタンダード」に見えてしまうくらいの、すっきりと洗練されていないところからまず始めないと到達できそうにない気が個人的にしますし、もしかすると現実的な実用主義はそういったゴツゴツして洗練されていない状態を受け入れることを要求してくるのかもしれない、なんていうイメージもふくらみました。 ページ数のすくない、ぎゅっと凝縮された論考といった新書なので、読んでいて難しかったりもっと広く扱ってほしいと思う箇所も少なからずありました。それでもぐっと視野が広まる良書です。著者はあとがきで、批判的に読んでほしいと書いています。この分野を活発にするためにはそういった態度での読み方が大歓迎なのでしょう。そのためには読みこんでしっかり把握しなければなりません。社会学に足をつっこみたい人にはぜひとも手にとっていただいて、がんばって批判をひとつでもぶつけてみるとおもしろいと思います。

Posted by ブクログ

2020/12/03

たぶん刊行当時手にとって迷ったはずだ。そのときはおそらくほかに優先すべき本があり、購入をひかえたのだろう。今回、キャンペーンで岩波新書を3冊買うと「生きのびるための風呂敷」がもらえるということで再び手にした。なにも風呂敷がほしいわけではない。それをもらったことをツイートして自慢し...

たぶん刊行当時手にとって迷ったはずだ。そのときはおそらくほかに優先すべき本があり、購入をひかえたのだろう。今回、キャンペーンで岩波新書を3冊買うと「生きのびるための風呂敷」がもらえるということで再び手にした。なにも風呂敷がほしいわけではない。それをもらったことをツイートして自慢したいのだと思う(と自己分析している)。さて、本書の内容のおそらく半分くらいは知っていることだった。できれば著者自身の実験をもっとくわしく知りたかった。なかなかその仕組みが難しく、その結果をどう判断していいのか分からないことも多かった。そんな中、共感したのは、「情動的共感」と「認知的共感」そしてクールな利他性ということ。医者や教師は専門家としてはあまり情動的であってはいけないのかもしれない。多岐にわたる情報を吟味したうえで、冷静に(クールに)治療や指導に当たるべきなのだろう。感情移入しすぎると、受験指導であやまることも多い。しかし、それはそうなのだろうが、それでも、やはり情動的な部分は必要だと思うし、ホットな利他性もあってほしいと思う。薬剤師を主人公としたドラマがあったけれど、そこでのテーマも同じようなものであったかと思う。さらに、最終章での話。メタモラルとしての功利主義。「最大多数の最大幸福」高校性のころ倫理社会の授業でこのことばを知って、「それがいい」と思ったものだ。しかし、それだけではうまくいかないという議論をたくさん読んできたし、それは理解できる。それでも、どうしても価値観が対立したときにメタレベルとして功利主義を持ち出すのは有効なのかもしれない。ただその議論をするときに、いったい、幸福とはなんなのだろうか、ということも考える必要があるように思う。例として挙げられているのは年収だろう。年収は少ないのは困るけれど、多ければ多いほどいいのかというとそれは違うような気がする。そういえば、最近のドラマで30億とかの遺産を手にしていながら夫に内緒にしていたという話があった。それはハッピーエンドで良かったのだけれど、幸せについてはいろいろと考えさせられる。共感するということ、利他的であるということ、そしてそれぞれの幸福、こういうことを引き続き考えていきたい。ところで、まだ風呂敷は届かない。

Posted by ブクログ

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