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魔法の夜

スティーヴン・ミルハウザー(著者), 柴田元幸(訳者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 白水社
発売年月日 2016/05/21
JAN 9784560092415

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商品レビュー

4.2

13件のお客様レビュー

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2019/12/30

太陽の昼は現実、月の光に照らされたのは魔法の夜。ミルハウザーの美しく精緻な言葉が月夜に目覚め、眠れない人々を描き出す、冴える幻想と美。9作目。 ごく短い話が物語は、深夜に起きる人たちと月を語る詩のような言葉でできている。夜に目覚めた少女や、マネキンや、眠れない一人暮らしの老女...

太陽の昼は現実、月の光に照らされたのは魔法の夜。ミルハウザーの美しく精緻な言葉が月夜に目覚め、眠れない人々を描き出す、冴える幻想と美。9作目。 ごく短い話が物語は、深夜に起きる人たちと月を語る詩のような言葉でできている。夜に目覚めた少女や、マネキンや、眠れない一人暮らしの老女、若者たち、5人の少女窃盗団、作家になりたい男、酔っ払い、コウロギの歌、トイストーリーのように動き出す人形たち、外に出てみる子供がいて、周りの風景や森や、工場、コオロギの鳴き声や車の音や風の音、それぞれの夜を月が照らしていることがわかる。 今宵は啓示の夜。人形たちが目覚める夜。屋根裏で夢見る者の夜。森の笛吹きの夜。 海沿いの、南コネチカットの夏の夜、月が上ってきた。 息をしよう、眠っていたローラが起きて着替え始める。 外に出てやっと息ができる。 自分だけの場所が。戸外だけれど屋根裏みたいに密やかな、誰にも見つからない場所が。空に昇った月を彼女は見る。ほぼ真ん丸の、ただし一方の端が片方少し平べったく、誰かが指でこすったみたいに少し汚れて見える月を見ている。彼女は突然あそこに行きたいと思う。あの燃える白さの中に入って、下の小さな町を誰にも見られず見下ろしたい。 窓から庭を見下ろしている少女ジャネット。 雪の冷たさを偲ばせる光、青く澄んだしんと静かな空気。庭の静寂、この庭には静けさが満ちてきて、それがまだまだ大きくなってついにはあふれ出るのか。窓辺でジャネットは動くのを恐れ月を待つ 生け垣を超えて海で見た若者がやってくる。 ハヴァストロー39歳は決まった生活(記憶をめぐる実験についての記述)を繰り返している、本棚がぎっしり並んだ二階の屋根裏書斎からそっと下に降りる。大きな夏の月が見守る中、青いナイロンのウインドブレイカーを羽織って、もう16年間もミセス・カスコと話すために通っている。「記憶なんていったって要するに忘却の、削除の営みであるわけです、あるのは喪失だけ、減少、喪失、忘却だけです。嘘、すべては嘘です」彼は語る。「で、あなた信じるの?」「ええ、いいえわかりません」彼は三時になるとそこを去る。 森に入り、解放された少女に出会う。 盗んだカギで図書館に入る三人の青年、ソファーやカウチに座って、青年らしい話をする。幻の少女の胸の隆起や太ももの並木を旅した話をする、まるで経験したように。 ダニーは家に帰り月明かりでガレージの洗濯物の陰が揺れる下で眠ってしまう。 マネキンはポーズの硬直が秘密の欲望を呼び起こす。彼女は解放を夢見る。 指がかすかに震え目を覚ます。 正体をさらすことはやってはいけないと知りながら夜の中に出て行く。 女子高生たちが街を荒らしている、些細なものを盗み、私たちはあなた方の娘ですと書いた紙を残ししばらく居間に座っていく。リーダーは<夏の嵐>と名乗っている。 少女たちは仮面をつけて今の椅子やカウチにこしをおろす。 一人暮らしの女は少女たちに気が付く。見知らない客たちにレモネードを出し正体は知っていても知らないふりをする。私は夏の月の妹と名乗ろう。素敵な夏の世のお客さんたちに。 少女たちは夜に溶け、女はレモネードのグラスを洗う。 子供たちが寝室のドアを開けている。そっと夏の夜に足を踏み出して、遠く眠りより快い夜の音楽を聞いている。 マネキンと散歩をした男。 月の神に抱かれたダニー。 森の中の散歩から家に向かうハヴァストロー。 人形は動きを止め、ピエロは崇拝する形のままコロンビーナを見続ける。 月の女神が庭の馬車に乗り込み闇をける、笛吹きは合図の笛を吹く。 現代詩の中で風景が揺らぐようなミルハウザーの世界に感動した。

Posted by ブクログ

2018/02/25

「小説の魔術師」といっても良いくらい、幻惑的な世界を作り上げることにて定評があるスティーブン・ミルハウザーの中編作。翻訳はもちろん柴田元幸先生。 「月の光でお読みください」と書かれた帯のコメント通り、真夏の夜を舞台に、家をそっと抜け出して街中を徘徊する少女、静かに動き出す人形た...

「小説の魔術師」といっても良いくらい、幻惑的な世界を作り上げることにて定評があるスティーブン・ミルハウザーの中編作。翻訳はもちろん柴田元幸先生。 「月の光でお読みください」と書かれた帯のコメント通り、真夏の夜を舞台に、家をそっと抜け出して街中を徘徊する少女、静かに動き出す人形たち、密かに動くマネキンの女性とその美しさに恋をする男、深夜に茶会を繰り広げる中年ニートと彼の同級生の母親の奇妙な邂逅・・・など、それぞれの登場人物が過ごす真夏の一夜の様子が幻惑的に描かれる。 ふと、自分が最後に真夏の夜を徘徊したのがいつだったかを思い出し、そのちょっとした冒険をまたしたくなる気持ちになってくる。

Posted by ブクログ

2018/01/04

 久しぶりに読むミルハウザー。  僕の記憶に間違いがなければ、本作はほんの少しいつものミルハウザーとは毛色が違うように思う。  いつも以上に詩的な表現が豊かなように思えたのだ。  様々な登場人物が過ごす一晩の出来事を、そんな詩的表現をたっぷりと含んだ、登場人物毎の短いパラグ...

 久しぶりに読むミルハウザー。  僕の記憶に間違いがなければ、本作はほんの少しいつものミルハウザーとは毛色が違うように思う。  いつも以上に詩的な表現が豊かなように思えたのだ。  様々な登場人物が過ごす一晩の出来事を、そんな詩的表現をたっぷりと含んだ、登場人物毎の短いパラグラフを積み重ねることで物語が成立している。  形式としてはリチャード・ブローティガンあたりを思い出すが、リチャードの作品にあるようなユーモアの代わりに、とても情緒豊かな世界が広がっている。  ほんの少し毛色が違うとはいっても、読んでいくうちに「ああ、やっぱりミルハウザーだな」と思わせてくれる。  いつものように詳細な状況説明があったり、情報過多になりそうな一歩手前の繰り返し(小物のリスト・アップといってもいいか)があったりする。  そして読み始めると止まらなくなる……僕にとってこれがいつものミルハウザーなのだ。  月夜に潜む「何か」というものを実際に体験、あるいは体感したことがある人であれば、この作品にとても共感出来ると思う(幸いにも僕もそんな体験、あるいは体感した人間の一人)。  月夜には嘘偽りなく「何か」が存在するし、本書を読めば間違いなく追体験することが出来る。  それどころか、月夜が明け、朝を迎えなければいけない際の切ない諦観や、一晩の貴重な体験への甘味な追憶の肌触りまでも感じることが出来る。  僕にとって本書はまさにそんな作品だった。  唯一、「クープ」と書かれるところを「コープ」と書かれていた箇所があったのが残念。  まぁ、大勢に影響は全くないけれど。

Posted by ブクログ

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