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ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語

津島佑子(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 集英社
発売年月日 2016/05/10
JAN 9784087716610

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商品レビュー

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2018/12/18

思い出の記念館ジャッカ・ドフニ・“大切なものを収める家”に訪れることで子を亡くした過去と向き合う私。 17世紀アイヌとシサム・和人の間の子として生まれ、キリシタンとなり、マツマエからナガサキ、果てはマカオ、バタビアまで流れ、羽ばたいていく少女チカ。 二つのお話が時系列や語りの手...

思い出の記念館ジャッカ・ドフニ・“大切なものを収める家”に訪れることで子を亡くした過去と向き合う私。 17世紀アイヌとシサム・和人の間の子として生まれ、キリシタンとなり、マツマエからナガサキ、果てはマカオ、バタビアまで流れ、羽ばたいていく少女チカ。 二つのお話が時系列や語りの手法を変えながら時代を超え響きあう物語は、信教、人種、争いなど、たくさんの分断の中で私たちが生きているということ、そして生きていけるということを教えてくれる。 それぞれの謡や物語を心に抱きながら。 読み終えて本を閉じた時、目に飛び込んでくる表紙。 描かれる“おらしょ”を唱える女性の姿は、限りなく聡明で美しく思います。

Posted by ブクログ

2018/02/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

キリスト教の禁教化が進む江戸時代を舞台に、アイヌの血を引くチカと、キリスト教徒の日本人ジュリアンが、新天地を求める。ほとんど蝦夷地の記憶を持っていない年少のチカだが、失われたアイヌの言葉、歌をよすがにして、津軽→長崎→マカオへと、南進する。 チカの物語と交差するように、著者の現代の記憶もシンクロする。チカの物語が過去から未来へ進行することと比較して、著者の物語は過去に向かって遡る。津島佑子の記憶とチカの記憶が、現代と過去から歩み寄り、アイヌの歌を介して響きあう。 津島佑子の作品は、死を巡る「喪失」、それこそ物理的と呼びたくなるゴツゴツした「喪失」感情のゆらぎを突きつける。その質感は圧倒的であり哀切。 という印象を抱かせる津島佑子の作品だったが、過去の作品からの印象であったのかも知れない。本作では、失われていくものへの尽きない思いが、諦念や無常観とは異なるものとして読み手に伝わる。自分の表現力のなさが呪わしいが、それは包摂のようなものか。 大きな物語。

Posted by ブクログ

2018/01/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ジャッカ・ドフニとは、北方のトナカイ遊牧民ウィルタの言葉で、「大切なものを収める家」の意味。 作者は2010年、26年前訪ねた「ジャッカ・ドフニ」の建物でウィルタであるゲンダーヌ氏と出会ったはずなのに、それは喪った子供と同じように幻だったのか・・・。 「あなた」はどんどん過去へと遡り、1967年の道東へと降り立つ。ここでは、作者がアイヌや北方民族と関わる過程と、我が子の喪失が語られる。 物語は、1620年の日本。キリシタンの少年(洗礼名ジュリアン)と、アイヌとシサム(和人)の混血児チカップが、キリシタンの迫害から逃れて、当時ポルトガルの植民地であった、中国のマカオに逃れるところから始まる。 チカップはジュリアンを兄とし、洗礼も受けるが、「半分アイヌ」である自分を、アイヌであるハボ(母親)、アイヌの歌を忘れることはなかった。ジュリアンはマカオでやがて日本に戻って、迫害に苦しむ信者たちを救うために、キリスト教聖職者となるべく勉強を続ける。 チカップは兄と別れる決心をしてマカオからパタビア(現インドネシアのジャカルタ)へ渡る。 チカップは多くの人と出会い、別れるが、ほとんどの人の消息は歴史の渦に飲まれてしまい、知ることができないままだ。 初めは時系列でなく、回想、しかもジュリアンの想像したチカの過去が語られるのでとまどう。ほぼチカップの視点で語られる物語は、多くの事柄が曖昧なまま、置いてきぼりにして進むので、ぜんたいを把握するのは難しいかもしれない。でも、物語の力が読み手を捉えて離さない。チカップのとった道は正しいのか、ジュリアンの願いは叶うのか。歴史の流れが多くの人々を押し流していく・・・。心に残る小説だった。

Posted by ブクログ

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