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邪宗門(下) 河出文庫
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邪宗門(下) 河出文庫

高橋和巳(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 河出書房新社
発売年月日 2014/08/06
JAN 9784309413105

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商品レビュー

4.2

14件のお客様レビュー

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2023/06/24

ー 千葉潔が行き悩んでいるのは、章句の問題ではなかった。夥しくちりばめられた着想を一つの構想にまとめる困難さのためでもない。机上での計画の綿密・杜撰よりも、一つの理想を制度として、あるいは目標として設定するためには、人と人とが信じあえる存在であるという大前提がいる。 すべての共同...

ー 千葉潔が行き悩んでいるのは、章句の問題ではなかった。夥しくちりばめられた着想を一つの構想にまとめる困難さのためでもない。机上での計画の綿密・杜撰よりも、一つの理想を制度として、あるいは目標として設定するためには、人と人とが信じあえる存在であるという大前提がいる。 すべての共同作業、 すべての道徳、すべての美が、ほとんど感傷的な人間信頼の上にでなければ成立しない。どんな心の歪みも辛抱づよい教育によって教化でき、窮地に立っても人は他者のことを心慮するという性善説。他者の犠牲にはならぬまでも、他者の苦悶を自分の心の痛みとして意識する存在でなければ、あらゆる理想主義的な計画は無意味なのだ。そして千葉潔は窮極のところ、それを信じることができなかったのだ。 誰かに騙され欺かれて、人間信頼の気持を失ったというのではない。生れた環境や育っ条件があまりにも恵まれなさすぎたからでもない。むしろ恵まれぬ状況の中にも、宝石のように光る真実と善意のあることを、恵まれなかった故にこそ彼は人並み以上に知っていた。だがまた、人間を信頼するにはあまりに恐ろしいものが、当の自分の中にあることをも、千葉潔は知っていた。心中の血をしたたらせた悪魔に気付かずにすごせる人は幸せである。それを無智と罵ろうとは思わない。だが万物は自己にそなわる。その自己の内部に巣くう恐ろしい悪の存在を知って、所詮は自己の影にすぎぬ他者を信じることは出来ない。坐禅も心頭の滅却も、遂にその心中の悪魔を滅しえなかった。 何故ならその悪は自らの生きようとする本能そのものに連っていたからだった。彼は彼の母を―いや戦争中にも、窮極には信じがたい戦友たちの行為と自己の心とを見ていた。とりわけ自己の内部の暗黒は、神は知らずとも自己自身が見ている。補給の見込みのない食糧の減少を少しでも緩和するために、隊長の命令とはいえ、もはや抵抗できぬ捕虜を、玉砕命令が伝えられた直後に、彼は橋爪進らの隊員たちとともに惨殺していた。 サイパンはすでに陥ちパラオも陥ち、迫ってくる敵の上陸を前にして誰しもが正常ではなく、生きて帰れる望みもなかった。だが、それにもかかわらず、当時の状況をあげつらうことによっては弁明しえない悪しき心の動きというものもまた確かに存在した。 ー 教団の弾圧、戦中・戦後の惨事、絶望からの復興とそして武装蜂起と崩壊までの下巻。 絶望的な貧困・飢餓から母を食い、戦時中には虐殺を行い、戦後は盗み、壮絶な放浪を繰り返す千葉潔が教団を乗っ取り教主となり国家に対する武装蜂起を行い、、、 素晴らしい作品。めちゃくちゃ面白い。 新興宗教の物語というか、これが人類の物語、日本人の物語なんだと思う。 人類、日本人、日本国家の有り様の全てがここに書かれている気がする。 本当に生々しい人間の物語。 やっぱ、高橋和巳の作品はすごいな。 ドストエフスキーの『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』並の読後の満足感。 『憂鬱なる党派』『日本の悪霊』は未読なので、これも早く読みたい。

Posted by ブクログ

2022/12/17

牧歌的な雰囲気すら漂う平和に暮らしていたはずの宗教団体。 それの狂気に満ちた悲壮感漂う坂道を転げ落ちるかのような終焉。 最初に堀江駒がボロボロの千葉潔を拾わなければ別の結末があったのか。 追い詰めたのは国組織か。どこでボタンを掛け違えたのか。 えもいわれぬ虚無感。

Posted by ブクログ

2022/11/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

しんどい読書だった。朝日ジャーナルでの連載作品とのこと。なるほど少しずつ読んだ方がいい。 情報量が多い上に描写が精神的にしんどい。とにかくしんどいというのが読後の正直な感想。 人間の精神や土着の信仰から生まれる宗教という内的な営みが多くの人に支持された結果、国家や政治という外的なものと関わらざるを得えなくなった先に起こる、戦争という国家の大転換。 民主的な団体だったが故に起こる内部分裂や、国家権力に弾圧され絡め取られていく様は必然であるだけにやるせない。 弾圧により幹部は投獄され分裂したひのもと救霊会の信徒たちは全国各地へ、南方の島や満州などの植民地へ散らばる。 そこでの各信徒達の目を通して全体的には大東亜戦争そのものを俯瞰するような構成になっている。 教団内部の分裂は、宗教的精神的な人間の思考の分裂を象徴しているように見える。 ひのもと救霊会の教えには多くの読者が素直に共感すると思う。私もこんな世界が本当にあったらなと思った。 最も貧しい人々の心から自然発生した土着の信仰を尊重し、善意と助け合いに基づく教団の信念が、弾圧にあった際、また壊滅ののちに、既存の宗教家や共産党、または占領軍によって、それぞれの文脈で好き勝手に解釈され唾棄されるくだりは胸を抉られる辛さ。 話の流れ自体は複雑なものではなく文章も読みやすいし面白いので続けて読んでしまい結果しんどくなる。日本人として人間として辛かった。 (上下巻を通しての感想)

Posted by ブクログ

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