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夜蝉に乱れて 光文社文庫
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夜蝉に乱れて 光文社文庫

小玉二三(著者)

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夜蝉に乱れて 光文社文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 光文社
発売年月日 2013/08/07
JAN 9784334766115

夜蝉に乱れて

¥330

商品レビュー

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2013/11/19

文芸小説の風格さえ漂わす

まずタイトルからして下世話な官能小説とは一線を画す趣が感じられる。そして、物語は主人公の中学生時代から始まる。この冒頭には多少の冗長さも感じられるし、大体においてさらっと書き流すことが多い過去の背景なのだが、これをじっくり綴ることで、その後の展開の土台を形成する役目となっている。...

まずタイトルからして下世話な官能小説とは一線を画す趣が感じられる。そして、物語は主人公の中学生時代から始まる。この冒頭には多少の冗長さも感じられるし、大体においてさらっと書き流すことが多い過去の背景なのだが、これをじっくり綴ることで、その後の展開の土台を形成する役目となっている。官能小説だから男と女の関係が大前提ではあるのだが、本作はまた別のところにもテーマがあり、それを一見何気なく見せる、というか感じさせるところに奥行きが見て取れた。どうしようもない人の業とも言えそうな蠢きを隣の家族に忍ばせた内容に文芸小説のごとき格調さえ感じられた作品である。 この隣の家族「赤浦家」は、壮年の主とその娘で主人公の同級生でもある【愛由子】、そして程なく登場する後妻の【博美】を基本構成とし、後から愛由子の妹【いずる】も登場する。この登場の時間経過に意味があり、主人公も中学から高校を経た大学進学後は休みの時くらいしか帰省しないことで、主人公の知らない空白期間もある。こうした時の流れとともに変化していく赤浦家の淫靡な内情が主人公を通してうっすらと見えてくる展開であり、主人公の不在時に行われていたであろうコトも透けてくるにおよび、何とも言えない退廃的な色合いも滲み出てくる。この意味ではメインとされるヒロインは特定できず、やはり「赤浦家」を描く物語と言わねばなるまい。あることをきっかけに変わっていく夫婦の形、それを目の当たりにして困惑し、反発を覚え、逃避もよぎる子供達……巻き込まれていく主人公は、同時に傍観者でもある。 何がどうしてこうなった、あるいは、あの時もっと勇気があればボタンは掛け違えなかったかも、といったすれ違いの風味を加えた行方だったり、きっかけこそ官能的ではあるが、見方を変えれば子が家離れ、親離れをするに似ているようにも考えられる顛末などを見るにつけ、本作は官能小説の枠を超えた内面の奥行きを描き出しているようにも感じられた。 それでいて、蠢惑的な誘惑を仕掛ける博美(後にこの理由が判明する)の妖艶さや大胆な寝取られ描写だったり、クールで近づき難い印象の愛由子が実は引っ込み思案で密かな想いを抱いていた中で見せた可愛げのある描写だったりと、少なからずの焦らしを交えた官能描写にも淫猥な空気感を持たせており、物語の中で描かれる要素として秀逸である。

DSK

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