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少年死刑囚 インパクト選書

中山義秀【著】, 池田浩士【解説】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 インパクト出版会
発売年月日 2012/04/12
JAN 9784755402227

少年死刑囚

¥825

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2023/11/21

短編小説ということを知らず、ガチの手記として読み始めてしまった。 それでほんほん言って感動していたのだからまったく滑稽と言うほかない。 しかしそれもまた作者の筆致の巧みさゆえだろう。マジで、こういう昔の告白体小説ってどうしてこうも私を惹きつけるのだろう。 主人公の言葉が流れるよう...

短編小説ということを知らず、ガチの手記として読み始めてしまった。 それでほんほん言って感動していたのだからまったく滑稽と言うほかない。 しかしそれもまた作者の筆致の巧みさゆえだろう。マジで、こういう昔の告白体小説ってどうしてこうも私を惹きつけるのだろう。 主人公の言葉が流れるように入ってきて一気に読み進められるし、昔の言葉萌え的な部分も刺激される。 話の本筋も切なく、一人の孤独な少年が自らの歪みを自覚しつつもどんどん引きずられるように罪を犯していくさまは目が離せない。 とにかくリアリティがすごいんだ。 その場その場で犯した罪のせいでどんどん後戻りできなくなっていくところに嫌なリアリティがある。 刑務所で人に優しくされて、やっと穏やかに人間らしく生きられるようになったのは哀しいと思いつつも、楽になれたのなら良かったな…… と、手記の最後で思わせておいての残酷なラスト。 ふいに恩情を与えられて、彼は無限の苦しみを決定づけられてしまった。 結局もとの彼に戻ってしまうどころかまるで死人のように生きていくことになる。 あまりにもつらすぎる。 この、最後のオチに、どうしようもない悲哀というか、ままならなさというか、因果なものを感じる。不条理であっけない。 なんとも言えない後味の悪さと、これから少年が送るであろう長い平坦な道のりへの予感を読者に残して、この小説は終わっていく。 この生々しさがこの小説を単なる「よくまとまった短編小説」とは違った、ワンランク上の傑作たらしめているのだろう。オチが天才なんだ。 この前半部分だけでもかなり面白かったんだが、後半の解説も興味深かった。 モデルがいたんだ!そりゃあリアリティも出ますわ!という驚き。 少年死刑囚のその後を追う部分はまるで探偵小説のようである。 証拠もちゃんと提示されるので論理的どころの騒ぎではない。 マジか?と唸った。 そして無期懲役を課された受刑者たちが精神に異常をきたすとはつゆほども知らなかったので驚いた。 よく考えたらそうだ。死ぬまでムショ暮らし!って言われたら誰でも長すぎて眩暈がする。 ましてや、すっかり死ぬ気で心安く過ごしていた人からしたら。どれほどの絶望とショックだろう。 釈放制度のこともロクに知らなかったので目から鱗が100枚くらい出た。 釈放制度がありつつも無期懲役刑の受刑者はそう簡単に釈放されるものではないということも初めて知った。 そして、更に提示された資料の中で意味深にマルがつけられていた受刑者が垂井くんのモデルだと明かされたときはもうおったまげた。 調べたのか? この筆者は、なんなんだ? 凄まじい。 そして、釈放してもらえなかったんだなぁと。 50年以上も壁の中で暮らし続けて生きていたのかと思った。79歳になるまで。 その年月の重さに圧倒された。 そのデータだけでは少年の様子まではわからないが、最後に作者が個人情報保護に阻まれつつも別の本に発見した件の囚人についての記述が示される。 どれだけ調べてんだよ作者は。ローラーか? 垂井くん(仮)は精神を病みながらもずーーーっと刑務所で作業をしていた。 前の資料と照らし合わせると、この本が書かれた2010年代には50年以上もの間そんな状態のまま刑務所の中にいたことがわかる。 前半の小説からずっと少年死刑囚の姿を追い、彼を一人の意識ある人間として確かに認識した読者に彼の仄暗い現状を想像させてこの本は終わる。 いま生きていたら94歳のはずだ。 彼は今頃どうしているのだろうか。 まだ壁の中で妄想などの症状に苦しめられ、それでも生きているのだろうか。 一つの面白い小説を知れたことはもちろん良かったが、後半の解説によって垂井くんの存在感が際立ち、彼のモデルになった刑務者の人生についての記述も深く心に残る。 かつ無期懲役刑とその受刑者についての以前の私なら知る由もなかった知識を仕入れることができた。 予期せぬ良書であった。

Posted by ブクログ

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