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骸骨の聖母サンタ・ムエルテ 現代メキシコのスピリチュアル・アート

加藤薫【著】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 新評論
発売年月日 2012/03/05
JAN 9784794808929

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商品レビュー

4.5

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2020/04/12
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※このレビューにはネタバレを含みます

近年メキシコにて広がりつつある民間信仰――サンタ・ムエルテ(「骸骨の聖母」)信仰について紹介する書。無名の民衆の中から生まれ、また現在進行形で新たなモードが生まれつつあるサンタ・ムエルテ信仰を概説すると共に、現代メキシコ社会におけるその意義を考察する。 本書は、現代メキシコの新たなスピリチュアル・ムーブメント(或いは民衆美術)であるサンタ・ムエルテ信仰を解説したものである。骸骨の姿で表されるこの異形の聖母は、時に黒魔術や麻薬密売といったアングラなものと結び付けられつつも確実に人々の信仰を集めている。著者はサンタ・ムエルテ信仰の由来・図像形態・供物・儀式などを概要的に説明すると共に、実際の信仰の場におけるサンタ・ムエルテとその信者たちの姿を紹介している。 サンタ・ムエルテ信仰は現在進行形で作られている信仰である。色や属徴といった図像学や儀式等の崇拝様式はある程度は定まってはいるものの、実際の信仰の場では各々の信者の事情に合わせたフレキシブルな形態を取っている。一方、その崇拝形態では化学工業製品は可能な限り忌避され、自然志向の様相がある。テピートといった都市貧困地区の人々の文化がサンタ・ムエルテ信仰に大きな影響を与えており、近年では麻薬密売人の守護者たる「麻薬の聖人」マルベルデとの結びつきも見られるようになった。 それらを踏まえた上で、著者は最後にサンタ・ムエルテ信仰が現代のメキシコにおいて有する意義を考察する。サンタ・ムエルテ信仰は、単なる民衆文化・民衆芸術の新たな一モードに留まるものではない。広がる経済格差と「麻薬戦争」の傷跡が深い影を落とすメキシコ社会において、人々は骸骨の聖母を既存の共同体に代わる新たな魂の救済者として見出している。そこにおける「骸骨の聖母」サンタ・ムエルテとは人々の守護神であり、またその「生」の守護神でもある。サンタ・ムエルテ信仰とは死を生へと反転させる表象であり、現代メキシコの人々が見出した生と死の「接触領域」である、と。 サンタ・ムエルテを概説的に扱った本は恐らく本書ぐらいしかなく、その意味でも貴重な情報をもたらしてくれる一冊である。

Posted by ブクログ

2012/04/13

メキシコにおける「骸骨の聖母」サンタ・ムエルテ信仰を包括的に論じた一冊。 サンタ・ムエルテ信仰とは、メキシコで近年活発化している、一種の聖人信仰です。ご本尊たるサンタ・ムエルテが、ローブをまとった骸骨聖母という何ともキャッチーな姿なのが特徴。新聞などでも取り上げられいるため名前...

メキシコにおける「骸骨の聖母」サンタ・ムエルテ信仰を包括的に論じた一冊。 サンタ・ムエルテ信仰とは、メキシコで近年活発化している、一種の聖人信仰です。ご本尊たるサンタ・ムエルテが、ローブをまとった骸骨聖母という何ともキャッチーな姿なのが特徴。新聞などでも取り上げられいるため名前を聞いたことがある方も多いでしょうが、日本語でのまとまった著述はほとんどありませんでした。その意味で本書の存在は貴重です。 サンタ・ムエルテ信仰のルーツ、祭壇の構成、儀式や祈祷の文言など一通りのところは扱っています。また、著者が中南米美術の専門家ということもあり、図像学的な解説が多いのも読みどころですね。特に、サンタ・ムエルテ像に用いられた各色の意味するところの解説は興味深いです(赤は愛情問題を解決し、黒はサンタ・ムエルテの超越性を示しあらゆる負のエネルギーを阻止するなど)。 入信儀式の体験レポートや祈祷の詳細な手順など、他ではあまり見られない記述も多いですね。手にとって損はないかと。 なお、図版は充実してます。特にサンタ・ムエルテ像の写真が多いのが嬉しい。中でも本書119ページ、「眼窩に白い花を差した像」は素晴らしいですね。ドレスめいたレースの衣装をまとい、葉巻をくわえ、左の眼窩に白い花を差した骸骨聖母という絵面が素敵すぎます。必見。

Posted by ブクログ

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