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格差・秩序不安と教育

広田照幸【著】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 世織書房
発売年月日 2009/07/07
JAN 9784902163445

格差・秩序不安と教育

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2014/05/20

 小泉内閣末期〜福田内閣期に筆者が発表した教育学関係論文・教育関係時論や講演をまとめたもの。民主党政権誕生直前の、構造改革・新自由主義に対する揺り戻しの時期に書かれた文章であるため、現状への批判というよりは、〈少し立ち止まって考えてみよう〉という全体的なムードに貫かれた1冊。教育...

 小泉内閣末期〜福田内閣期に筆者が発表した教育学関係論文・教育関係時論や講演をまとめたもの。民主党政権誕生直前の、構造改革・新自由主義に対する揺り戻しの時期に書かれた文章であるため、現状への批判というよりは、〈少し立ち止まって考えてみよう〉という全体的なムードに貫かれた1冊。教育学全体を視野に入れた議論は筆者ならではで、相変わらずひじょうに参考になる。巻末のブック・ガイドは、文学研究でもこういうものが可能か、考えさせられてしまった。  広田の主張は、日本国家の側は「グローバル化」をふまえ、それに対応した教育の戦略を(その評価はどうあれ)それなりに用意しているのだから、対抗する側にもそれに応じた理論武装は必要だ、というもの。そこで広田は、「グローバル化」、多元重層化する社会を具体化させていく上で、教育が果たすべき役割を強調する。教育は社会・経済・政治と深く結びついた営みである。また、教育は、好むと好まざるとにかかわらず、社会の再生産機能を担ってしまっている。ならば、その現実を直視し、その機能をどのように行使すべきか真剣に考えるべきだ、というわけだ。ここには、政権党の保守的な思想を念頭に、教育を社会や政治から囲い込むかたちで、教育の自律性の確立を目指した戦後教育学への痛烈な批判と反省が述べられている、といってよい。すなわち、教育は、〈どんな社会が望ましいか〉を想像=構想する営為でもある、というわけだ。  これは、しごく真っ当な議論であり批判である。と同時に、教育学の言説が、たとえば再生会議のような保守的な秩序維持を重視する教育観や、新自由主義派の競争原理主義的な教育観と同じ土俵の上で勝負すべきだ、と主張しているに等しい。つまり、ことが社会的な選択である以上、具体的に人々に訴求しうる明確な社会観・教育観をアピールすべきだ、ということになる(だから広田は「シティズンシップ教育」を高く評価する)。  おそらくそれは、きわめて論理的かつ妥当性のある〈戦略〉ではある。だが、この〈戦略〉性は、ともすれば、教育における歴史修正主義をめぐる論争と相似的な事態を招きかねないとも思う。なぜなら、社会観どうしの争いである以上、たとえば選挙で決定され、現代において有用性がアピールできる社会観・教育観を優先させよ、という主張が成り立ちうる素地を作ってしまうからである。  だから、この戦略は、制度的に多元性・多重決定性を積極的に保持するような、別の〈戦略〉と一体的に進められる必要があるとわたしは思う。敵ははるかに強大で、人的にも資本のレベルでもリソースは甚大である。ならば、抵抗の拠点となりうるポイントが多い方がよいに決まっている。  

Posted by ブクログ

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