見るからに怪しい装丁だが。内容もこのうえなく怪しい。 ヨギとはヨガを極めた聖者のこと。彼らは何も食べず何十年も生きたり、 瞬間移動したり、病気を治したり、死人を生き返らせたり、 自分が死んでもすぐ弟子の前で復活しては死後の世界について教えてくれたりする・・・らしい。 読んでて面白いのは確かだけど・・・ こんな事実だとはとても思えないような話を、わざわざ時間をかけて読む必要があるのか？かなり分厚いし・・・ 読む価値は、ある。 そもそも、よい人生を送るにはどうすればいいのか？ 理性だけに頼って合理的に生きればそれでいいのか？ いや、それじゃ人はいつまでたっても自分に嘘をつくことをやめられない。 自分にとって良いものと悪いものとを都合よく区別しては、 本来向き合うべき問題から、なんやかんやと理屈をつけて逃げ出してしまう。 ヨギの語るところによれば、人生の目的とは「神との合一」を果たすこと。 神は全てに遍在する。自分は神の中にあり、神は自分の中にある。 良いも悪いもない。すべては平等。すべてはひとつ。 それに気づいてこそ、人は本当に自分の人生を生きることができる・・・ そんな思想を、理性という重力に縛られた人々に伝えるには、 聖者たちの「奇跡の物語」が必要、ということなのだろう。 現代の神話にして福音書といったら持ち上げすぎか。

実在したインドの聖者パラマハンサ・ヨガナンダの自叙伝。 実に人間的なヨガ行者の生い立ち、その後の活躍が生き生きと描かれている。 エンタメとしての魅力も持ちながらも宗教哲学的な真理の考察もできるというとても稀有な本。 永遠の一瞬、 清らかな流れ、 宇宙との一体感、 読後の憧れにも近いヨガナンダへの気持ち、 この世界観はじっくりと時間をかけて体験してもらいたい。