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母なる夜 白水Uブックス56

カート・ヴォネガット(著者), 池澤夏樹(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 白水社
発売年月日 1984/06/01
JAN 9784560070567

母なる夜

¥385

商品レビュー

4.3

17件のお客様レビュー

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2024/05/03

カール・ヴォネガットに初挑戦。主人公はアメリカ人の劇作家だが、スパイとしてドイツ側に。ドイツ敗戦後、その身分を抱えたまま複雑な事態に。第二次世界大戦において誰しも、つまり勝った側も負けた側も置き場の無い感情を抱えたまま。双方の演者として関わった彼は、更にアンビバレントな立場だ。 ...

カール・ヴォネガットに初挑戦。主人公はアメリカ人の劇作家だが、スパイとしてドイツ側に。ドイツ敗戦後、その身分を抱えたまま複雑な事態に。第二次世界大戦において誰しも、つまり勝った側も負けた側も置き場の無い感情を抱えたまま。双方の演者として関わった彼は、更にアンビバレントな立場だ。 ヴォネガット初だったので、登場人物が作家だった事からも「これはもしかして自伝?」とも思ったのだが、検索するとネタバレしそうで我慢。 ストーリーの機微に触れずに小説の感想を書く技量がないので、主題ともなるスパイについて、その境遇を考えてみた、というか考えさせられた。二つのアイデンティティで生きられるのか。二つの組織のオーダーに対し、自らの利害や自我に照らして優先順位をつける。偽装した人間関係に身を置き、容易に行き来できない。そもそも、誰とも腹を割って付き合えない。 最早、任命された時点で職業的に自我を失うのではないか。サラリーパーソンが自我を失うのは職場や飲み会までだ。最近ではそれもD&Iで許容されそうなムードもある。スパイとは、裏切りであり、裏切りとは自我の喪失。自死に等しいのかも知れない。

Posted by ブクログ

2013/05/27

本棚に積んだまま、いずれ、いずれ、と3年近くほっぽらかしていた。 正確に言うとほっぽらかしていたのではなく、「構えて」しまっていたのだ。彼の代表作だと知らなければ、きちんと読まなければなどと気負うことなく気楽に読めたかもしれない。 読み始めてからもしばらくは「構えて」いた。ぼ...

本棚に積んだまま、いずれ、いずれ、と3年近くほっぽらかしていた。 正確に言うとほっぽらかしていたのではなく、「構えて」しまっていたのだ。彼の代表作だと知らなければ、きちんと読まなければなどと気負うことなく気楽に読めたかもしれない。 読み始めてからもしばらくは「構えて」いた。ぼくは第1章と第2章(といってもたったの9ページ)を3度読み返している。最初に中断したのはコーヒーを淹れるためで、二度目の中断は風呂に入るためだ。落ち着きのない男と思われるかもしれないが、これは大事な人の手紙を読むときにいつもする儀式であって、筆者への礼儀の深さと本書への期待の高さを表現しているだけのことだ。もっともその「儀式」のあとはとくに気負うこともなく読み進めた。ちりばめられたユーモアとアイロニー、おかしなおかしな小説なのに、読み終わるころには、なにやら重たく黒い塊りで胸が締め付けられるような気がするのだ。その「重たく黒い塊り」としか表現できないものが何なのか、説明できるとよいのだが、、、ムズカシイ。 『母なる夜』は第2次世界大戦中にナチス・ドイツの対米宣伝放送をやりながら、一方でアメリカのスパイとして情報を送り出していた男の波瀾に満ちた戦後を描いた1961年の小説である。訳者の池澤夏樹は「現代という分裂症的な時代にいかなるモラルが通用するかが主題ということになるだろうか。」と書いている。第2次世界大戦を題材にしているという点では1969年の『スローターハウス5』と好対照をなしている。 カート・ヴォネガットの小説を読むときにいつも気づかされるのは、相対的な視点ということだ。冷笑的で何ものからも距離を置いているかのような彼の文体は、しかし、すべてに疑いの目を向けながら、よりたしかなものを追求しようという視座に支えられている。それがいいすぎならば、少なくともそのように読者に感想を書かせる力に満ちている。人間のおろかさや滑稽さ、かくも偏見に満ち、妥協という形でしか変化を示さぬかたくなさ、見ようとするものしか見えない狭隘さ、それを小説家はどのように表現するか。人間とは偏見に満ちたものだ、と書いてしまわずに、小説を通じてそれを読者に気づかせる、それがすぐれた作家というものであり、本物の文学というものだ。いうまでもなくカート・ヴォネガットは本物だ。ユーモアやアイロニーだと思えた章句がいつしか箴言とも啓示ともなって跳ね返ってくることをぼくたちは体験するのだ。

Posted by ブクログ

2013/03/21

物語において一貫しているのは、残酷なくらいまでの、帰属の不安。国家という最も基本的な帰属は第二次世界大戦における任務によって失われ、家族・愛情という人間性の面での帰属も失ってしまった男が見事にえがかれていた。社会からも追放された不条理さと、ふわふわとして実体のない不安な状況のなか...

物語において一貫しているのは、残酷なくらいまでの、帰属の不安。国家という最も基本的な帰属は第二次世界大戦における任務によって失われ、家族・愛情という人間性の面での帰属も失ってしまった男が見事にえがかれていた。社会からも追放された不条理さと、ふわふわとして実体のない不安な状況のなか、様々な事件や陰謀が繰り広げられて、ストーリー性も秀逸。現代アメリカ文学がえがく不安定な状況のなかの人間心理は本当に面白い。ウォガネットにますます興味が出たので、これから違う作品もよんでみます。

Posted by ブクログ

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