江戸時代に役者の評判に始まり、戯作者や医者、町娘、初物などなどの評判をある定型に則って記載した出版がありましたが、それをまとめた一冊。 褒める人やけなす人が登場してそれぞれの対象の人をコケおろしたり、褒めたえたり、それをまとめる人がいたり、面白いフォーマットで書かれていて、その人の当時の評判がわかる。 ただ上上ランクになると今では名も残っていない人がたくさん出てくるんですが、当時江戸ではそれなりに有名だった人が時間の中で埋れてしまっているんですね。 評判記の位置付けや、謎の作者などに多くのページを割いて解説するのはいいが、評判記の中身をもっと取り上げて欲しかった。

１９８５年刊。著者は九州大学文学部教授。◆前代と異なり平和な江戸時代においては、文化が爛熟していく過程を辿った。その文化的な「名物」に対して、その内容、長短、優劣等の解説を加えた書が発刊され、庶民らに読まれていくこともまた、文化の爛熟の一側面である。本書は、江戸時代において刊行された「名物」の評判記を渉猟することで、江戸期における文化の成熟具合や時期による違いを明らかにしていく書である。◆文化史的な知識がない上、かなり細かいのでざっと目を通した程度。が、まず寛政期末頃に初めて出た評判記が遊女。 そして、寛政期後の明暦期からは歌舞伎役者の評判記が生まれ、享保以降、文学作品のパロディとしての評判記が、文化文政期くらいから悪口・辛口を基礎にする評判記が頻出とのこと。◆そもそも、遊女(エロ)⇒役者(アイドル、特に男性アイドル)⇒小説などに対象が広がる過程は、人の関心事の深奥を覗き見るようで興味深い。また、役者評判記が明治初期まで約２００年間刊行され続けた点は驚愕。◆なお表題は「名物」だが、文化的所産一切と見た方が本書の内実に合致するか。