この文庫再登場はうれしい。いわゆるベタなスペース・オペラで、ＳＴＡＲ　ＷＡＲＳや寺沢武一”コブラ”に連なる世界、といったらわかりやすいだろうか。往年のアニメはキャラクターは好きだったが、ストーリーの訴求力が原作を読んでいる身にはちょっと物足りなかった気がする。でもこれは、ナウシカや、前出のコブラのアニメ化時にも感じたことであり、映像化時のひとつの限界をしめしているのかもしれない。

先日、昔NHKで放映されたアニメの第一話を観る機会が あった。私はこのアニメが好きで、実はサントラのCDまで 持っていたりするのだが、なぜか今まで原作は読んだことが なかった。子供の頃通った図書館には創元推理文庫は豊富に 揃っていたが、ハヤカワ文庫は数が少なかったことが影響 しているのかもしれない。そこで、ジャック・ヴァンスの スペース・オペラを読んだこの機会に全集読破を思いたった 次第である。 確かに古さを感じてしまうことは否めない。ストーリーも 勧善懲悪だし、今となってはジュヴナイルほどの内容と 言ってもいいだろう。だが私は素直に楽しむことが出来た。 特に「暗黒星大接近」は伏線の張り方と回収─と言うか ギミックの出し方と使いかたが絶妙で、とても約80年前に 発表された作品とは思えない。しかもこの頃は原稿量が安く ほぼ最初に書き上げた第一稿そのままであると言うから ハミルトン恐るべし、である。 こういう作品を楽しめなくなったらお終いだと思うのは ヒロイック・ファンタジーと根は同じところにあるのかも しれない。エバーグリーン。佳品である。