『ペテロの葬列 下』―謎を紐解く杉村三郎、人間の深淵を覗く 杉村三郎シリーズ第3弾『ペテロの葬列 下』を読み終えた後、心がずっしりと重くなりました。バスジャック事件から始まった物語は、単なる事件の解決を遥かに超え、人間の欲深さや善意と悪意の間で揺れ動く心理を深く掘り下げていきます。事件の被害者たちに届いた「慰謝料」の謎を追う中で、杉村三郎はかつて膨大な被害者を生んだある事件に行き着きます。この連鎖は、ただの事件以上のものへと私たちを導いてくれるのです。 杉村三郎の人柄の良さと行動力が、さまざまな人々を引き寄せるとともに、彼が巻き込まれる事件の深淵にも光を当てています。不運な状況から始まった今回の事件を通して、人の心の複雑さ、そして人生における「最適解」とは何かについて、深く考えさせられました。物語の人物の立場に立ったら、自分ならどう行動するだろうと想像することが、この物語を読む魅力の一つです。 終盤には予想外の展開が待ち受けており、その苦しみや葛藤は、読む者の心を強く揺さぶります。しかし、それでもなお、杉村三郎が次にどのような活躍を見せてくれるのか、期待せずにはいられません。『ペテロの葬列 下』は、杉村三郎シリーズがただのミステリーで終わらない理由を、改めて教えてくれる作品です。人間の心の深淵を覗きながら、私たち自身の人生についても考えさせられる、そんな一冊になっています。

事件の話は救われないなと思いつつ、詐欺の怖さをひしひし感じました。 日頃忘れかけている悪意が身近に潜むという事実を思い出させてくれます。 そして、木暮老も悟りを開いたと思いきや結局「教育する」という思考から抜けられなかった故のバスジャックですね。それを冷徹に描く宮部さんの厳しさが好きです。 ともあれ最後の菜穂子さんの勝手さにびっくりしました。 一緒に読んだ母は「わがままお嬢様」と称してましたので、女性でも共感される人とそうでない人と分かれると思います。 私は女ですが、この人とは友だちになれないと思います。笑 彼女が一番なりたかった「大人」とやらになるのだったら桃子ちゃんを第一に考えて杉村さんに相談しながら色々試してみることこそ大人なのでは…と思うとやはり最後の選択は自分本位だなと思いますが 何もかも破壊して繭から出たかったんでしょうね。 そんなに冒険したかったなら無理矢理ついて行ったり連れて行けと騒ぐなりすればよかったのに、それができない性分の二人だったからこその離婚ということでしょうか。 喫茶店のマスターがいい味を出していて好きでした。

長編ですが、グイグイと読ませるところは さすが宮部みゆきサマ。 とはいえ、慰謝料への対応がすーっと腹オチするかといえば、ちょっと…ですね。 あと、菜穂子さんのこと、やっぱり好きになれません。 いくら杉村さんが縁を切ったとはいえ、桃子ちゃんを杉村さんのご両親に会わせてあげるとか、なんで配慮しなかったんでしょうね？ あげくに彼女が原因の離婚って、アナタ。そりゃないわ。