君は「特殊特許」を知っているか。 僕は知らない。 だって、著者が勝手に名付けたものだもの。特殊特許とは、「なんでこの人が、こんな会社が？」「なんで、こんなものを特許に？」「なんで、そんな主張ができるの？」「なんで、これが特許になるの？」というようなもの。 本書に登場する「なんで？」は、ダウンタウンの松本だったり、東野圭吾のサラリーマン時代のものだったりする。中にはiPS騒動の森口氏の特許もある。なんと本人の取材にも成功している。特許出願と取り下げの顛末はなかなかおもしろい。 秋元康による、AKB48の恋愛シミュレーションゲームも特殊特許だ。著者はそのゲームを購入して、ゲームとしては面白さにかける、といいながら篠田麻里子の「神告白」まで辿り着き、なんとも言えない達成感と恍惚感を味わったという。これ、特殊特許とあんまり関係ない気もするが、特許性を確かめる重要な作業なのかもしれない。 震災前から30mの津波を想定していた海上移動式原子力発電プラントとか、手に馴染んで装着しやすく、夫婦で協力しあおうという精神性が強く発揮される結婚指輪とか。 公開されたものを突っ込むだけなら簡単だが、本書は発明者に取材を試みている。返事がもらえないものもあるが、答えてくれた人は、やっぱりみんな面白い。やっぱ変な人っていいよね〜。

　企業にとってせっかくとった特許だけに他社の動向が気になる。「特殊特許」とは著者が勝手に読んでいる個性的な特許と書かれており、専門用語でもなければ隠語でもない。それだけ特許の世界にもいろいろあるということだ。 中にはニュースにもなった有名な案件が載っている。それは、餅の切り込みの位置で訴訟に発展した「サトウの切り餅♪」対「正解は越後製菓」のケース。越後製菓は、餅の側面に切り込みを入れて良い具合で焼き上げることを目指してとった特許がある。2003年8月20日に「越後ふっくら名人」という名前で発売されたとある。その一方で、サトウ食品は2003年9月1日から「パリッとスリット」という切り餅を発売した。こちらは側面プラス上下に切り込みを入れている。 越後製菓による訴訟が始まり、2011年11月30日に東京地裁でサトウ食品は越後製菓の特許権を侵害していないという判決が出た。その後も訴訟が起こっているそうだ。一度火が付いたら餅だけに膨らむ一方か。 　他に有名なものとしてはアップル対サムスンがある。アップルがiPhoneの「バウンスバック」という機能などに関して、カリフォルニア州でサムソンを訴えた。バウンスバック機能について「指を一方向に動かし続けると余白が表示され、その指を離すとはね返るような動作で余白が消える機能」と説明がされている。この裁判ではアップルの主張が認められたとある。 　その他にも「特殊特許」とあるだけに個性的なものが多い。特許に詳しくない人にも興味を持ってもらうには、特許の案件にきらりと光る個性が必要になる。 切り餅に関する東洋経済の記事 http://toyokeizai.net/articles/-/15872?page=2