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コーヒーと恋愛
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コーヒーと恋愛
¥440
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商品レビュー
3.6
135件のお客様レビュー
獅子文六氏(1893〜1969)は、劇作家、小説家、演出家として昭和の演劇振興に尽力された方。この小説は1962年から1963年に「可否道(コーヒーどう)」という書名で、読売新聞に連載され、1963年に新潮社より刊行されたものを1969年に「コーヒーと恋愛(可否道)」と改題され...
獅子文六氏(1893〜1969)は、劇作家、小説家、演出家として昭和の演劇振興に尽力された方。この小説は1962年から1963年に「可否道(コーヒーどう)」という書名で、読売新聞に連載され、1963年に新潮社より刊行されたものを1969年に「コーヒーと恋愛(可否道)」と改題され、角川文庫より文庫化。2013年にちくま文庫より復刊されたとのこと。 昭和の隠れた名作。すっごく面白いかというと、今の感覚の「面白い」にはもの足らない感じがするが、ウィットとか上品なユーモアとかを感じさせる。 主人公は坂井モエ子という脇役として国民的に愛される女優で、美人ではないが、「嫌われない」キャラ。 コーヒーを淹れる腕前が絶品で、そのコーヒーでもって八歳年下の新劇団員のハートを捉えて夫婦となっていたが、44歳になったとき、19歳の新劇女優に夫を奪われる。 彼が去ったあと、コーヒーを淹れるのも朝ごはんを作るのも張り合いが無くなり、自分一人のためならインスタントコーヒーで済ますという日々を送り、荒んだ気持ちが仕事にも影響して、初めて主役を務めたドラマも不評。仕事も暇になったある時、コーヒー仲間に「可否会」の主催者との結婚話を持ちかけられた。コーヒーを通じてその菅先生とは懇意になっていて、何かと相談相手にもなってもらっていて、お互い乗り気ではあったが、菅先生は自分の創設したい「可否道(コーヒーどう)」の助手としてしかモエ子のことを考えておらず、愛を感じられないので、モエ子は「イエス」と言えないでいた。そこへ新しい彼女に去られた元夫が戻ってきて「やっぱりモエちゃんのコーヒーが毎日飲みたい」と復縁を迫るのだが、モエ子は自分への愛情ではなくコーヒー愛からモエ子をパートナーとしたい男達にうんざりし、自分の女優としての仕事を極める勉強のために海外へ旅立つ。 1962年ごろの40代といえば、大正生まれ。モエ子を初め、この頃のテレビ俳優と言えば、新劇出身者が多かったようで、テレビを軽蔑しながらも生活のためにテレビに出続け、心はまだ新劇にあるという人が多かったようだ。テレビがまだ珍しかったころの芸能界やインスタントコーヒーが庶民に普及し始める少し前からコーヒーに親しんでいたインテリ達の生活など、その時代の人達からも今の私達からもちょっと一般人とは違う世界の人達の世界のことが書かれていて、そこが新鮮かな。 あと、セリフがちょっと昔のチャキチャキした江戸弁?みたいで、昔テレビでたまに見た古い白黒時代のドラマや映画を思いだす。 古き良き時代というのか、文化を味わうつもりで読むのがいいかな? でも、最後のモエ子はかっこいい! 今の芸能人も結婚だの離婚だのドロドロだらけだが、あんなに潔く自分のために旅立つことが出来る生き方は古くない。
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1963年に刊行されたこの本、自分が生まれる半世紀も前の話なのになぜか共感できるし、登場人物がいい人すぎる。温かい心で本を閉じた。獅子文六、ちゃっかり登場するのかわいくて好き。
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阪神古書ノ市で友と選書のし合いっこをした際にプレゼントしてもらった本。 古書ノ市楽しかったなぁ! 戦後の昭和が舞台の物語。 昭和らしい独特な言葉回しを最初は読みづらく感じたけれど、だんだんクセになって楽しく読み進める事が出来たし、なんなら脳内で口癖がうつッちまったわ…。 ハイカラでユーモアがたっぷりなお話。 登場人物みんながカラッと明るくてサッパリしているのは時代ならではなのかな? とんでもないクソ女であるアンナですらカラッとしていて憎めない。良い! コーヒーとタイトルに入っているだけに、コーヒーの蘊蓄も沢山でコーヒーを飲みたくなる。 昔からあるような古い喫茶店でコーヒーをのみながら読みたいなぁ。 可否道には何度も笑ってしまった。なんやねんコーヒー道の家元て!本人は大真面目なのも憎めなくて良い。 最後の方の展開は「やァ、モエ子女史、ほだされちゃァ、いけないよ…」とハラハラしたけれど大笑いしてスッキリ気持ちの良い締めくくり。 そこまで皆を夢中にさせるモエ子女史のコーヒー、味わってみたいもんだなぁ。 あとがきもユーモアたっぷりで良い。それ、コーヒーによる胃もたれでは…?! 昭和の作品がこんなに読みやすく、面白いだなんて。 自分じゃ絶対に選んでいないタイプの本なので出会えて嬉しい一冊。 実写化しても面白そうだなー、と色々想像しながら読んだ。 ベンちゃんは田中圭さんなんかどうだろう!
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