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贈与の歴史学
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贈与の歴史学
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商品レビュー
3.9
26件のお客様レビュー
「過去が現在よりもつねに素朴だと思うのは、過去にたいする見くびりであり、現代人の傲慢である。」 至言。(現代の)自分達が過去より良いもの、進んだものに囲まれてるとは限らない。
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極端とも言える発展を遂げた中世日本の贈与儀礼について、具体的な事例を通してその本質を探る内容。極地とも言える15世紀の贈与慣行の特異さ、経済や時代精神との関係性が非常に興味深かった。
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日本中世において猖獗を極めた贈与経済についての本。モース『贈与論』とゴドリエ『贈与の謎』の議論によれば、贈与には提供の義務、受容の義務、返礼の義務、神に対する贈与の義務の4つの類型がある。日本古代において租と調は元々、神に対する贈与の義務が税に転化したものだったが、平安時代中期に...
日本中世において猖獗を極めた贈与経済についての本。モース『贈与論』とゴドリエ『贈与の謎』の議論によれば、贈与には提供の義務、受容の義務、返礼の義務、神に対する贈与の義務の4つの類型がある。日本古代において租と調は元々、神に対する贈与の義務が税に転化したものだったが、平安時代中期においてそれらは官物と呼ばれる地税に統合されて、神への捧げものとしての性格が失われてしまった。 神への義務は失われてしまったが、その後も他の形態の贈与は生き続け、中世には贈与儀礼が大いに発展した。将軍家に対しても多くの贈与品が集まったが、そこに目をつけたのが室町幕府。1441年9月の嘉吉の徳政令は京都の金融業者である土倉・酒屋に大きな打撃を与え、土倉役を主要な財源としていた室町幕府自身を深刻な財政難に陥れた。財政難の幕府は、将軍家への贈与品を修理費が必要な寺院に寄付し、寺院は贈与品市場でそれらを売却することで、修理費を捻出したという。幕府の倉から一銭も出さずに財政出動を行っていたわけだが、なかなか巧妙な手口であると思う。 中世の信用経済の発展に伴った折紙システムの記述が本書のハイライトであろう。中世では贈り物を持参する際に折紙(目録)を添える作法があり、銭に添える折紙を用脚折紙という。当時は、いきなり銭を贈らず、金額を記した折紙を先方に贈り、後から銭を届けるのが一般的だった。銭が引き渡された後で清算が済んだ証として、受贈者から贈与者に折紙が返却された。折紙システムの登場により、銭がその時に手持ちが無くても贈与がおこなわれるようになり、また折紙で贈与の相殺が行われるようになったという。年中行事で様々な機会に人々が将軍に贈った折紙は、室町幕府の重要な財源とみなされ、そこからの収入は折紙方とよばれ、専属の奉行人の折紙方奉行まで任命された。15世紀末から折紙だけ贈って、銭を未納する事例が目立ち始め、折紙システムは16世紀になるとほとんど見られなくなったという。MMTの議論を絡めて言えば、折紙は室町将軍への贈与(納税)義務によって信用が担保されていたと言えるだろう。 本書は、筆者のさまざまな論文を集めて再構成したものであり、内容はやや詰め込みすぎで散漫な印象を受けたが、神への贈与を起源とする税徴収が行われた古代、それが失われた後でも、中世において発展した贈与儀礼についての流れを理解するには大変面白かった。現代とは違う中世の経済構造について知りたい人にはおすすめの本だ。
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