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シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店

シルヴィアビーチ【著】, 中山末喜【訳】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 河出書房新社
発売年月日 2011/06/23
JAN 9784309205670

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2013/02/11

代官山の蔦屋に行った。 評判が広まった今、店内は雑踏と化している。本をゆっくり吟味できたはずの席はひとつも空いていない。2階のカフェにようやく見つけた席は、隣席の男がPCにカタカタ入力し続けている。向かいの中年の女性客2人組は間断なくしゃべり続けている。席の後ろの通路は人がひっ...

代官山の蔦屋に行った。 評判が広まった今、店内は雑踏と化している。本をゆっくり吟味できたはずの席はひとつも空いていない。2階のカフェにようやく見つけた席は、隣席の男がPCにカタカタ入力し続けている。向かいの中年の女性客2人組は間断なくしゃべり続けている。席の後ろの通路は人がひっきりなしに通り過ぎ、時にはどしんとぶつかって行く。考えたり読んだりするには最悪の環境だ。 だが深夜の1時とかに車で来て駐車できる書店は23区内では稀有な存在だし、ある種のセンスで品揃えされていて、他にはない本との出会いがあることはここの魅力だ。 去年の夏、ここでヘミングウェイの『移動祝祭日』と出会った。その自伝の中で彼は書いている。一時期を薄給の通信員としてパリで過ごした彼は、パンにもこと欠くほど貧しかった。その彼が、母国語で古今東西の古典を存分に読むことができたのは、「シェイクスピア・アンド・カンパニー書店」のお陰だった。オーナーの米国人女性シルビア・ビーチは貧しいヘミングウェイから本代を受け取ろうとはしなかった。その恩義を忘れなかった彼は、1944年8月のパリ解放の時、いち早くビーチ女子の元に駆けつけ、ナチスの占領下にあった書店を「解放」したという武勇伝はかなり有名だった。 昨夏パリを訪れた時、ヘミングウェイの足跡を辿ってみることが旅の目的のひとつだった。すでに、当時の彼の妻が大資産家の令嬢であり「貧しい」暮らしは強いられたものではなく、質素さを好んだ夫婦の志向によるものだと、私は知ってしまっていた。だから、翌年に自殺することになる60歳の大作家が、自らの成功も順風な人生の結果ではない、「パリ時代、食うに困るほど貧しかったときもあった」と、実相とは異なる「貧しく美しかった自分」を、老境の回顧録の中で演じさせていたのではなかろうか、そんな風に考えながらカルチェラタンやモンパルナスを歩いた。 去年『移動祝祭日』と出会ったのと同じ平積台で、今度は『シェイクスピア・アンド・カンパニー書店』(シルビア・ビーチ著)を見つけた。こんなマニアックな本は、よほどのこだわりのある書店員でなければ置かないだろう。ドンキホーテ並みに混んでしまっている状況ではあるけれど、この書店の魅力の一端は未だ損なわれてはいないようだ。 ぱらぱらめくると、「推測」に過ぎなかった私の思いを真実として裏づけてくれる当事者の証言が目に飛び込んできた。 貧しいヘミングウェイを憐れんで、貸本代金も受け取らなかったはずのシルビアは、「私の最良のお客様」と題した章で、ヘミングウェイは「定期的に訪れるだけでなく書籍購入のためお金を使ってくれる」、「大変ありがたい」お客さまだったと回想しているのである。 証拠を掴んだからと言って、嘘だの偽善だのと野暮なことを言う気は毛頭ない。パリという街は、野心や志を胸に抱く者が、我こそは未来の大芸術家だ、と勝手に誇大妄想しても変人と扱われない寛容な街だ。貧しく失意の底にあっても美しく死んで行く身だと勝手ストイズムに嵌っても死ぬまでほっといてくれるありがたい街でもある。路上画家やらパフォーマーが街中に溢れ、落書きとは思えぬアートが溢れている。それらの自称他称の芸術家のための巨大ステージがパリなのだから、功なり名遂げてしまった一人の大作家が、「俺もパリ時代は貧しかったんだ」と自ら思い、そう世界に吹聴して何が悪い。私はそんなヘミングウェイを「演じる」彼をこそ敬愛する。 もうひとつの「解放」の武勇伝だって、どうせ脚色された美談だろう。そうであっても構うものか。私は頁を繰った。 最終節のひとつ前は、「解放」と題されている。連合軍入城の目前、自暴自棄になった独軍はジョイスが愛したホテルを焼き払い、気の早い戦勝パレードで凱歌をあげる民間人に機銃を撃ち込んだ。書店のあるオデオン通りは最後までナチの占領下にあったのだ。 最終節「ヘミングウェイ、オデオン通りを解放」には、シルビアをはじめとするオデオン通りの住人たちが、「シルビアー、シルビアー」というヘミングウェイの大きな叫び声を聞いたのはそんな最中だったと記されている。 血のにじむ戦闘服の彼は「機関銃をどしんと音を立てて」床に置いた。シルビアから通りの家屋の屋上に陣取るナチの狙撃兵を何とかしてほしいと頼まれ、連合軍の兵士とヘミングウェイは最後の銃撃戦を決行した。 「解放」の真実は小説よりも勇ましい事実だった。 よし。2600円也のこの一冊を買う決意をした私は立ちあがった。 どしん。通路を歩く人に背中が当たる。 おう。私はいつもの私よりも何倍も雄々しい私になっていた。

Posted by ブクログ

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