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きみの鳥はうたえる
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きみの鳥はうたえる
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商品レビュー
3.7
47件のお客様レビュー
1970年代の青春のひとつだったと思われる この作家の夏と暑さと汗の描写にいつも感心してしまう すこしみじめでみっともない感じがなんか懐かしい タイトルの意味するところがまたもや判らないけどかっこいいな
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再読。本当に大好きな作品。 ひと夏の幸福な時間を描いているはずなのに、最初からずっと暴力的な予感がある。 「僕は率直な気持ちのいい、空気のような男になれそうな気がした」と言うように、「僕」は意識的に静雄や佐知子に自分の中を通り抜けさせているように思う。この話は「僕」から見た静雄...
再読。本当に大好きな作品。 ひと夏の幸福な時間を描いているはずなのに、最初からずっと暴力的な予感がある。 「僕は率直な気持ちのいい、空気のような男になれそうな気がした」と言うように、「僕」は意識的に静雄や佐知子に自分の中を通り抜けさせているように思う。この話は「僕」から見た静雄や佐知子の物語なんじゃないかと思うくらい。 「僕」はバイト先の誰とも関わろうとせず、バーの飲み仲間ともつるまず、自分にも全然興味を持っていないのに、静雄にだけは心を開いている。 オールナイトの映画に連れ出されるシーンや、カンダタのくだりに見られるように、「僕」は生活の中で静雄に引っ張られたり影響を受けているところがかなりある。静雄がどんなに情けなくても、「僕」はずっと静雄に心を寄せ続けている。 そこに佐知子が現れて、2人が近づいていくごとに、「僕」の気持ちも、「僕」から見える静雄も変わっていく。 静雄が佐知子に「もう一度お休みを言ってくれないか」と頼んだときから、「僕」は佐知子を通して新しく静雄を知り続けているんじゃないかな。 静雄が持つ独特の愛嬌やナイーブさはとても魅力的だけど、静雄が主人公だと独り善がりの苦しい物語になっていたと思う。「僕」の目を通して初めて 静雄が憎めないキャラクターとして浮かび上がってくるのではないかなと思う。 そう考えると、「僕」の周りとの距離のとり方はすごく切ない。まるで「僕」自身に実体はなくて、静雄や佐知子やバイト先の人達といった周りの人たちとの関係によってゆらゆらと形作られた陽炎だと思っているみたい。 「空気のような男」になる必要なんてない、あなたの人生の幸福はあなただけのものにしていいのに。最後、悲劇に巻き込まれるのは静雄だけど、本当に悲しみの底にいるのは静雄も佐知子も失った「僕」なんじゃないだろうか。
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若者たちのひと夏の話でしたね、この瞬間が永遠に続けば、と思っても、人は変わるし、同じ夏も二度とはこない。若さゆえの倦怠と、根拠のない万能感、優しさと非情さと、気まぐれと。成人していても老成しきれない微妙な年頃の若者の描写が巧みです。佐藤さんの本は海炭市叙景を読みましたが、そこはか...
若者たちのひと夏の話でしたね、この瞬間が永遠に続けば、と思っても、人は変わるし、同じ夏も二度とはこない。若さゆえの倦怠と、根拠のない万能感、優しさと非情さと、気まぐれと。成人していても老成しきれない微妙な年頃の若者の描写が巧みです。佐藤さんの本は海炭市叙景を読みましたが、そこはかとなく漂う寂寥が、今作にもあるなと思いました。 読了後、本の内容と自身の記憶と思い返して苦しくなりました。映画も観たいです。
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