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宗教を生みだす本能 進化論からみたヒトと信仰

ニコラスウェイド【著】, 依田卓巳【訳】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 NTT出版
発売年月日 2011/04/25
JAN 9784757142589

宗教を生みだす本能

¥1,540

商品レビュー

4.3

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2023/07/29

タイトルの通り、宗教を生みだす本能が人間には備わっていること、その性質は遺伝によって受け継がれてきたことを主張している本。宗教の起源、音楽・舞踊とのつながり、共同体の道徳・経済・生殖行為に与える影響などがわかりやすく説明されている。著者はニコラス・ウェイド。進化心理学に精通し、『...

タイトルの通り、宗教を生みだす本能が人間には備わっていること、その性質は遺伝によって受け継がれてきたことを主張している本。宗教の起源、音楽・舞踊とのつながり、共同体の道徳・経済・生殖行為に与える影響などがわかりやすく説明されている。著者はニコラス・ウェイド。進化心理学に精通し、『Nature』『サイエンス』などでサイエンスライターとして活躍した。 印象に残ったのは、宗教は性習慣に介入し、出生率をコントロールする機能があるという点だ。中絶や避妊、同性愛の禁止を命じる宗教は多いが、それらはすべて出生率の増加につながる。集団の規模か大きくなることは、周辺の共同体に対する優位性に繋がる。 もうひとつ印象に残ったのはは、著者が進化論における集団選択の立場をとっている点だ。『利己的な遺伝子』のリチャード・ドーキンス、『暴力の人類史』のスティーブン・ピンカーに対立する主張がたくさん書かれていた。たしかに、生物の世界では淘汰は遺伝子のスケールで起こっているが、人間に関しては集団での淘汰も含めて考える必要性を感じた。 宗教が世界に存在し続けてきた理由がわかるようになる本。 印象に残ったところメモ。 ・奇食者と戦闘、この2つの大きな脅威に対する対応策が徐々に明らかになった、宗教である。 ・食事の喜びは人を食べることに向かわせるが、食べることの進化論的意味は別にある。信仰の満足は人を宗教の実践に向かわせるが、宗教の進化論的機能はまったく別のところにある。それはすなわち、人を結束させ、集団の利益を個人の利益に優先させることだ。 ・宗教行動もシグナルとして機能する。厳しい儀礼を通してのみ学ぶことができ、膨大な時間を要求するからだ。 ・シグナルは象徴であり、言葉よりはるかに効果的にメッセージを伝えられる。 ・出生率は、とりわけ原始宗教においては存続を左右する重要な要素であり、宗教は出生率を調整する有力な手段となる。宗教的慣習は通常、出生率を上げるために設けられる。 ・多数の社会に性交のタイミングを定めた宗教規定がある。 ・結婚には明らかに存続上有利な点がある。ひとつには、自分や家族を守ってくれる男性を女性が得ることで、幼児を成人まで育てられる可能性が格段に高まる。また、社会という観点から極めて重要なのは、結婚生活が少なくとも原則上、男性間の争いの主な原因、すなわち女性の奪い合いという問題を解決する点にある。

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2017/08/05

前半は進化論からみた宗教の起源と役割。 後半はユダヤ、キリスト、イスラムの創立の歴史とアメリカをメインとした宗教の今と未来。 この本で初めて知った事実も多く、宗教学の新たな地平を垣間見た。 ・集団内では利己主義が利他主義を打ち負かす。集団間では利他的集団が利己的集団を打ち負かす...

前半は進化論からみた宗教の起源と役割。 後半はユダヤ、キリスト、イスラムの創立の歴史とアメリカをメインとした宗教の今と未来。 この本で初めて知った事実も多く、宗教学の新たな地平を垣間見た。 ・集団内では利己主義が利他主義を打ち負かす。集団間では利他的集団が利己的集団を打ち負かす。 ・利他主義と戦闘は共進化した ・人はある意味で子供を持つために恋をする。が、それは恋をするという主観的な体験の説明からはほど遠い。同じように神意と交信する体験は宗教にある多くの特典の一つである。 ・音楽の進化論的起源。性選択と集団の結束。 ・現代の宗教は儀礼や感情的つながりより、教義や知的な信仰を重視する。 ・ダーウィンの考えを裏付けるように、人間の音楽の能力は様々だが、しゃべる能力に大差はない。これは言語が厳しい淘汰を経たことを示している。 ・狩猟採集民の宗教の特徴。1.聖職者がいない、教会もない。2.リズミカルな身体運動。3.聖なる物語は共同体の存続に関わる道徳や実用的な教えを説く。4.神学の問題にほとんど関心を示さず、実用的な問題を重視する。 ・宗教儀礼による規制の利点は、統治機関がなく、思慮のある統治者さえいない状況で、神聖な習慣に従って多くの人々を統治できる。 ・聖職者の宗教と恍惚の宗教の緊張関係は歴史を通して続き、いまも宗教の変容の主要な原動力となっている。 ・座席の第一の目的は、司祭の説教の間に座る場所を提供することでなく、人々を踊らせないためにヨーロッパの教会で16世紀に設けられた。 ・人類の祖先の人口はある時期、天災によってわずか5000人にまで減った。 ・全く新しい宗教が成功する見込みはほとんどない。新しい宗教を始めるのであれば、どこか既存の宗教のセクトとしてスタートするのが最も簡単な方法。 ・聖書は人々に生来備わる宗教行動の性質をきわめて効果的に刺激した。トランスに代わって、知的に満足できる方法、すなわち神と交流する預言者を提供することによって、超自然に接触したいという人々の望みを満たしたのだ。 ・布教活動は既存の社会ネットワーク内で行うと一番成果が出やすい。 ・コーランはムハンマドの死から150年以上すぎた800年頃までには最終的な形にまとまらなかった。 ・宗教の結束を支えに武力に訴えることもあれば、和平を追求することもある。 ・暴力は宗教より社会に起因すると考えるべき。社会は宗教を用いて、暴力を正当化することもあれば、あおることもある。 ・宗教は戦闘の目的と言うより手段。また、戦闘の原因になりやすい点は武器と似ている。 ・どんな国にもある種の信仰、国を重んじる気持ち、市民宗教は存在する。特にアメリカは。 ・現代の信仰を脅かしてきたのは、科学知識の発展と高等批評(聖典の科学的研究)。 ・北欧では人々は宗教に関わる必要性を感じない。重大なストレスを受けるアメリカでは、頻繁に宗教行動が見られる。 ・家畜を飼い、生乳を飲むという文化が、遺伝子の変異につながり、北ヨーロッパでは大人になっても牛乳を消化できる能力を得た。 ・世俗化が進んでいるのは、宗教が聖典という枠の中にとどまり、人々の信頼を失いつつあるからだ。宗教が廃れずにいるのは、人々が何かを信じたいと思っているからで、歴史に関する宗教側の主張に合理性があるからではない。

Posted by ブクログ

2016/11/26

読み終えるのに時間はかかったが、内容は意外と単純。宗教は社会をルールに従わせるためと、戦争のために結束させるために発達したと説明する。 ドゥ・ヴァールは道徳について、共通の価値に基づいて争いを処理する集団全体のシステムから生まれる善悪についての感覚と定義する。道徳はサルや類人猿...

読み終えるのに時間はかかったが、内容は意外と単純。宗教は社会をルールに従わせるためと、戦争のために結束させるために発達したと説明する。 ドゥ・ヴァールは道徳について、共通の価値に基づいて争いを処理する集団全体のシステムから生まれる善悪についての感覚と定義する。道徳はサルや類人猿にも見られる(対立後の和解、共感、社会ルールの学習、互恵の観念)。 人間が言語を獲得すると、他人が何を知り、何をしたいかを推測する心を発達させた。自分の行動を集団に示して評判を高めることによって、道徳的推論が進化した。心を発達させた集団は、生き残りをかけて争う中で、個人に社会の利益を重視させるようになった。 著者は宗教を、感情に働きかけて人々を結束させる信念と実践のシステムと定義し、超自然的存在の懲罰を怖れる人々は自己の利益より全体の利益を重んじる役割を果たすものであると説明する。狩猟採集社会では、通過儀礼と集団での舞踏を通して、すべての人が神のルールに従うことを誓うことにより、集団として存続するための知恵を得て、警察などの統治機関なしに社会を結束させた。超自然的な懲罰を怖れた者たちが、最強で永続力を持つ社会を築いた。現在の狩猟採集民の宗教は、日常生活の大部分を占め、精力的に歌い、踊り、強い感情を引き起こす夜通しの儀礼をおこない、信仰より儀礼を重んじる共通点がある。サミュエル・ボウルズは、ジョージ・プライスが開発した方程式を用いて、集団の協力関係を生み出す利他主義と集団間の戦闘が共進化したことを示している。著者は、舞踏、音楽、儀礼に基づく原宗教、言語、超自然的存在への共通の信仰に基づく宗教の順で発生したと推論する。 定住社会では、聖職者階級が人々と神の間に立つようになり、祭司の王が支配する古代国家が生まれた。統治機関があったとしても強制力を持たなかった時期に、宗教儀礼は人口調整や資源管理などの社会的、生態学的な規制面で重要な役割を果たしただろう。宗教が聖職者のものとなり、超自然界のメッセージを自由に解釈できるようになると、極端な解釈も横行した。 BC722年にイスラエル王国がアッシリアに滅ぼされた後、BC640〜BC630年の間にアッシリアが撤退すると、ユダ王国はイスラエル王国を取り戻して併合するために、イスラエル人がエジプトを脱出してカナンに王国を築いた物語を提示し、ヤハウェをエルサレムの信仰の中心にした聖書を用いて共同体の結束を図った。ヨシュアはBC610年に戦死し、エルサレムはBC597年にバビロニアに占領され、多くの住民がバビロンに連行されたが、信者を共通の目的に向けて束ねる聖典を生み出した点では成功した。 キリスト教は、ローマ帝国内の都市に住みつき、ギリシャ語を話すヘレニズム化したユダヤ人の間で普及した。公共福祉が全くなく、大災害が頻発したローマ帝国の中では、進んで助け合うキリスト教徒の姿は際立ち、女の子を殺すことや堕胎、同性愛は禁じられたため、教徒の数は増えていった。 戦争で宗教が大きな役割を果たしたものは、73の大きな戦争のうち3つしかない(7〜8世紀のアラブの大征服、11〜13世紀の十字軍、16世紀のプロテスタントの宗教改革)。宗教は戦争の目的ではなく、国民の支持を得るためにスローガンとして用いられているに過ぎない。戦争に脅かされることがなく、北欧のような充実した福祉制度のある国で育つと、宗教活動に関わる必要性を感じなくなる。 宗教の存在理由は社会へのルールの導入と結束であるとする説明は、理解はできる一方で、それだけなのかと頭が整理できないのも正直なところ。アメリカ人向けなのか、三大一神教に関する記述がメインなのも物足りない。ドーキンスの「神は妄想である」にも、宗教の起源や道徳の根源に触れているようなので、確認してみよう。

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