自分には、主人公が人生の空虚さに目を背けるために行動しているように読めた。仲間たちとの馬鹿騒ぎや無鉄砲な旅は、騒がしさで長い人生や時間を埋めて、人生は空虚であるという実感と向かい合ってしまわないようにするためのもののように感じた。他のレビューに散見するように確かに旅は長く同じようなことの繰り返しもみられるが、それによって長い人生をなんとかやり過ごそうとしている悲痛さがより如実に感じられると思った。 また上記の内容は、読者である自分が比較的清潔で、冒険のない生活を過ごしているから出てきた感想かもしれないとも思った。訳者の解説を読み、もし主人公たちの旅をより身近に、具体的な憧れをもって感じられる読者層や時代がかつてあったとしたら夢があるなと思った。 自分にも主人公サルにとってのディーンのように、生涯忘れられないきらめきのような他者はいるだろうかとじっくり考えた。

第二次世界大戦後のアメリカで周囲からも見放されるほど気の赴くままに生きる若者を描いた作品。読み進めるのがしんどかった。池澤夏樹さんの世界文学全集を読んでみようと手に取ったが、あまり面白いと感じれなくて、でも1冊目で途中終了になるも嫌で、活字を追ったという感じ。生きている時代が異なるからか、なかなか面白さがわからなかった。

二人の若者が何かに憑かれたように広いアメリカ大陸を旅する小説。見聞を広げるような旅ではなく、思いのままに定めた目的地までの移動手段を手に入れ、飲酒、ドラッグ、セックス、盗みなど刺激的に移動することだけが大切なこと。人と人との距離が近い古き良き時代の破滅型の青春小説だが、現実的にはなかなか踏み出せない放浪への憧れは、今も昔も変らない。ケルアックのヒッチハイクの旅の経験がベースになっており、実在のモデルが多数登場しているとのこと。