本書は，西洋芸術音楽（クラシック音楽）とその楽しみ方に関して，主要楽曲150曲以上を紹介しながら解説していく入門書である． 　内容は2部構成で，第1部「作曲家列伝」，第2部「音楽をもっともっと楽しもう」から成っている． 　第1部「作曲家列伝」は，著名な作曲家44名を採り上げ，その生涯と音楽を，バロック音楽から現代音楽へ至る音楽史に沿いながら解説していくというものであるが，各時代に於いて作曲家がどこで活躍したか，また，その時代背景にどのような歴史的出来事があったのかが地図や年表で分かりやすく説明されているほか，国内で入手可能な名演奏のCD・DVDの紹介や，雑学的な問題を取り扱ったコラムにもページの多くが割かれており，内容はカタログ的な作曲家の紹介に終始せず，飽きることなく読み進めることができる． 　第2部「音楽をもっともっと楽しもう」は，楽器や楽器編成，楽曲の形式などについて，西洋芸術音楽を聴くうえで役に立つ周辺知識を解説するという内容であり，少々専門性が高い問題についての記述ではあるが，コンパクトに述べられているので読みやすい． 　また，本書の特徴として，「CD2枚付」であることが挙がられるが，これについても豪華な内容であり，幾つかの収録曲については，本書の解説頁に目を通しながらこれを聴くことで，曲の鑑賞法について理解が深められるようになっているなど，初学者には非常に嬉しい付録となっている．なお，音源提供はキングレコードである． 　総じて，本書は非常に広範な分野について網羅的にまとめられた良好な入門書であると評すことができ，題名に入っている「完全ガイド」の文言や，「入門書を超えた充実度」という宣伝文句にも恥じない内容であるといえよう．西洋芸術音楽とその楽しみ方について知りたい初学者には強く一読を薦めたい一冊である．