小田実『何でも見てやろう』の後に読んだ。あれに比べると、政治的なイデオロギーが少なく、素直に楽しめる。 7年間、海外を自転車旅行するということは、仕事をやめるということである。7年のブランクができるということである。 いろんな意味で、そんな冒険に挑戦できる人間はめったにいない。日常に埋没していると、全てを投げ捨て、ふらっと海外を漂泊したくなる。 いいよな、旅は。

雑誌サイクルスポーツの連載をしている石田ゆうすけさんが1990年代に7年かけて自転車で世界を旅した旅行記。 7年という歳月は長い。 旅のスケールはものすごく大きく、この本に描かれていたのは旅のほんの一部にすぎないだろうことがわかる。 私も自転車旅をしてみたいと思っているが、とてもじゃないけれど石田さんがしたような旅はできないだろう。 未知の世界へ飛び込む向こう見ずの勇気。 安定したサラリーマン生活を辞めて飛び込んだ旅の世界。 寒い中でもお金を節約するためにするテント泊。 言葉が通じない中で何とかしてコミュニケーションをとろうとする粘り強さ。 強盗に出会ったり、お金を取られたりするかもしれない怖さもあるのに人を信じる気持ち。 これらの苦労と引き換えに誰も見たことのない景色にも出会えるだろう。 しかし、こういう本を読むとどうしても考えてしまう。 旅は終わる。 旅は旅である。 旅が日常になってしまったら旅ではない。 旅が終わった後、石田さんはどのような人生を歩んできたののだろうか。 知りたくなった。