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イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む
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イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む
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4.4
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蚤とねぶた -2007.10.13記 明治11-1878年の6月から9月にかけて、東京から日光経由で新潟へと日本海に抜けて北上、北海道へと渡る旅をしたイギリス人女性イザベラ.バードが書き残した紀行文が「日本奥地紀行」だが、これを引用紹介しつつ我が国の古俗習慣を考証した宮本常一の「『日本奥池紀行』を読む」を繙いてみるといろいろな発見があってなかなか興味つきないものがある。 芭蕉の連句集「猿蓑」の「夏の月」巻中に「蚤をふるいに起きし初秋」と芭蕉の詠んだ付句が出てくるが、この旅の間、彼女をずいぶんと悩ませたのが、この蚤の多さであったという。 「日本旅行で大きな障害となるのは、蚤の大群と乗る馬の貧弱なことだ」と彼女が冒頭に記すように、行く先々で、蚤の群れに襲われたとか、蚤の所為でまんじりとも出来なかったとか、たえず蚤の襲来に悩まされたことを書きつけているらしい。 そういえば幼い頃、子どもたちが順々に並んでDDTを頭からかけられたりしている光景を思い出すが、蚤や虱の類は、戦後の進駐軍によるDDT散布が広まるまで、どこにでもものすごく繁殖していた訳だ。蚤はどこにでもいるのがあたりまえで、あたりまえだから特段古文書などに出てくることもなく、いつしかそんな日常の暮らしぶりもわれわれの記憶の彼方に忘れ去られてしまっているのだ。 芭蕉には「蚤しらみ馬の尿する枕元」という発句も「奥の細道」にあり、「造化にしたがひ四時を友とす」俳諧であったればこそ「蚤.虱」もたまさか登場するが、こういうのはごく稀だから、そんなに蚤の多かった暮しぶりなど今ではなかなか想像することもむずかしい。 本書で宮本常一は青森や秋田の「ねぶた」を「蚤」と関連づけて簡潔に考証している。 「ねぶた」は「ねぶたい」であり、津軽では「ねぶた流し」といい、また秋田あたりでは「ねむり流し」といい、富山あたりまでこういう言葉があるという。夏になると一晩中蚤に悩まされて誰もみな眠い、その眠気を流してしまおうという訳でそんな謂いとなったと。七夕の日にするからむろん厄流し、災い流しの意味も込められている行事である訳だが、「ねぶた」というその眠い原因は「蚤」にあり、「ねぶた流し」は「蚤流し」と元来は結びついていたというのだ。 現在の派手々々しく絢爛豪華な「ねぶた祭」を支え興じる人々からはとんでもないと礫も飛んでこようが、存外こういった素朴な発想からの名付けとみるほうが実情に即しており、よほど真相に迫っていると言えるのではないかと思われる。
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宮本常一による日本奥地紀行の解説本。日本観光文化研究所の講読会の書き起こしのため、口語文ですらすら読める。 宮本常一の目にかかると日本奥地紀行の一文一文がこのように読み解けるのかと、様々な対比をする博識と実地の裏付けに感嘆するばかり。
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アイヌと日本人との比較で、人間として美徳とされる性質が必ずしも文化的な発展に結びつかない、むしろ逆に阻害する原因にさえなるという観察が興味深かった。
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