保守的で能天気な80年代ハリウッド映画の陰で､スタジオから締め出された映画作家たちは､異様な悪夢の世界を描いた映画を作っていた｡ その理由を､入手可能な資料と監督自身の言葉を手がかりに解きほぐす｡ 80年代に狂い咲いた映画作家たちの真実｡『映画秘宝』連載の｢Yesterday Oncemore｣に大幅加筆の決定版｡ 「ビデオドローム」は、ネットの普及やマスコミによるバーチャルリアリティが大衆を洗脳している現代を先取りした作品である。 「グレムリン」でジョー・ダンテ監督がやった映画の脱構築やアニメのディフォルメ表現を実写で再現する手法や自分の映画体験をモザイクしたり漫画的な残酷描写を実写で再現する手法は、ティム・バートンやタランティーノを先取りしたもの。 「ターミネーター」の元ネタは「ウェストワールド」のガンマンロボットであるのと、イエスキリストの誕生をストーリーにだぶらせたかったのと、キャメロンが強く逞しいヒロインを描くことにこだわっていた理由。 「未来世紀ブラジル」は、テリー・ギリアム監督のアメリカで警察に乱暴された経験が元になっているのと、フランク・キャプラ的なキャラクターがカフカ的な状況に巻き込まれるストーリーであることと、ギリアム監督がハリウッドとエンディングをめぐって争ったこと。 「プラトーン」は、オリバーストーン監督の実体験が元になっていることとオリバーストーン監督が何故反体制的な姿勢を取り続けるのかの理由。 「ブルーベルベット」は、シュールリアリズムの絵画の手法が取り入れられ、アメリカの時代の変化を反映させたこと。 他にも、「ロボコップ」や「ブレードランナー」についても、隠された意図を読み解く優れた映画評論本になっています。

面白すぎて時間を忘れて読み倒しました。 80年代の映画8本について解説した本なのだが、各監督の経歴やインタビューなどを丹念に調べてあり、映画とは別にこの本だけですごく面白い読み物になっている。 半分くらい観たことない映画だったが、まさか『ロボコップ』にそんな背景があったとは驚きでした。デヴィッド・リンチ監督がイケメンで、高校のプロムでキングだったとか、インテリ家庭出身とかのトリビアも面白かった。 町山さんにはこういった本をもっと沢山書いて頂きたいです。