雑貨屋で謎の男が謎めいたお話をしながらモノを売る話。繋がりはあるが短編集のようにも見える。ハープシーコードや鉛の兵隊など心にグッとくるしかも読んでてギミックが面白い作品も良いが、自分としてはとにかく美味しそうな料理が延々と語られる晩餐会（全編詩のお話だ）の話が好き。 　ラストは冒頭から匂わせていたメタ的な結末で現実と物語の境界が融解するようなホラー的な部分もある終わり方だった。周りの人間が一人一人消えていき、最後には世界の外にいるはずの書き手すら混乱して消えてしまう。具体的に何が起こったかは話されないのが恐ろしい。大時計や傘立てなどの恐ろしい結末や、寄木細工の文具箱や鏡のようなホラーが多いためそんなふうにも感じる。最後に語られた物語がホラーっぽいベッドの話なのもその読後感を増している。

一行目：エイルサは、興味がある分野は〈動物の飼育〉と〈工業〉だと書いた。 何かで紹介されていたはずだが、忘れてしまった。それでも、本を手にとったときに「あっ、訳が金原さんだ！さらに絵は佐竹美保さんだ」とすぐに思えたところに、あぁあのガイドブックとあの作家さんのお話が結びついて、こういう喜びになるのだなぁ、としみじみした。

2022/04/26 読了 ブックオフでジャケ買い。 金原瑞人さんはアレックスシアラーの翻訳で知ったが、この人の翻訳が個人的に好きなようで、読んでいて本当に気持ち良い。 古物店で物を売る際にMCCが語る物語が何作も連なる短編のような形になっているが、それも読み進めやすかった1つかも。 最後は思いもよらぬ展開に驚きつつ、この続きをぜひ読みたい！と思わせるラストだった。