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金色の玄関に

タチヤーナトルスタヤ(著者), 沼野充義(訳者), 沼野恭子(訳者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 白水社/
発売年月日 1995/05/10
JAN 9784560043356

金色の玄関に

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商品レビュー

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2022/12/30

 この本に収録されている「ペテルです」を大学の授業で読み、先生に褒められたことを今でも覚えている。その時は得意な気分になっていたけれど、後からどう見ても不幸な状況の中で「ペテルです」が幸せな最期を迎えるのにそら恐ろしくなった。しかし、今これを読み直すととても安らかな気分になる。 ...

 この本に収録されている「ペテルです」を大学の授業で読み、先生に褒められたことを今でも覚えている。その時は得意な気分になっていたけれど、後からどう見ても不幸な状況の中で「ペテルです」が幸せな最期を迎えるのにそら恐ろしくなった。しかし、今これを読み直すととても安らかな気分になる。  思うに、「ペテルです」は最期に自身の希望を失った向こう側にある「悟り」のような境地に立っていたのではないだろうか。あるいは別の表現で言えば「ペテルです」の最後には聖愚者、ユロージヴィの境地が記されているのではないだろうか。これはあの時話していて、今ただ思い出しただけなのかどうかわからないけれど。  その希望の放棄を別の側面から語るなら、坂口安吾の「文学のふるさと」に似た境地ではないか。それは成熟した社会に散見される一つのパターンであり、その種の成熟した社会性からの退行、喪失という関係性が生み出す何かであろう。  それは自らの望みの放棄であるがゆえに、「所有」の否定であり、対価を求める交換の否定であり、柄谷行人のいう交換様式Dの原動力となる何かではないだろうか。  坂口安吾は「ふるさと」に帰ることは「大人の仕事」ではないという。確かに交換なしに人は生きられない。しかし、優れた社会はこの「ふるさと」を知っている、ということに自分は共感する。  ふとした拍子にこの本を思い出して、読んでそう考えた。著者はロシア人で、動向は全く知らない。  なぜ自分がこんなことを書いているのかよくわからないし、それに何の意味があるのかよくわからないが、ウクライナとロシアの戦争についてようやく少し自身の考えが形作られたので残しておく。  やはり事情はどうあれ、ウクライナのインフラを攻撃したりして、軍隊でない罪なき人々の生活を破壊するのをただ黙って許すべきではないと思う。  ただ、西側以外のすべての国家も一斉にロシアに何らかの措置を取るべきだとも思えない。それは何か別の破滅の道を行ってしまう気がする。  自分は何も知らないからこの争いについて何か意味のあることが言えるとは思えない。  そして、そもそもの立場から言えば、自分の思想、自分の生きている時間には達成できないであろう超長期の目標は国境という制度そのものの正当性を問い、その力を弱める方向性にある。そのため、思想的な立場としてはロシアにもウクライナにも西側諸国にも日本にも、すべての国家に全面的に肩入れすることはなく、どの国家の目的とも利害対立があるし、可能であればどの国家に住むどの住民もどの行政機関も支援するべきものだ。そのことにようやく意識的に気がついた。でもそれも正しいかわからないし、まあ、対立も支援も、文字通り大海に水を1滴垂らすに等しいし、まだ何もしてないし、何かできるかどうかもわからないが。  それも相まって何も言えることがない。ただ、今はウクライナに平和が訪れることを願う。  「ミッシングリンク」と「星たちの光をめぐって」を書ききったあとは、本当に人生でやるべきことをやりきったと思った。今までまともな恋愛をしたことがなかったから、恋の歌を口ずさんで、恋をして、UNHCRなんかの国連の組織に寄付しながら、超長期目標を見据えてひっそり地道にプラットフォームづくりに勤しもうと思ってたけれど、なんかそんな感じでもないのかもしれない。それも一興だ。「ペテルです」の精神で、やれる限りやっていこう、という、いつもながらのいい加減なお話。何か特別なことをするわけでなく、自分のやることは何も変わらないけれど。  ロシアは入院したりで正直ロクな思い出がなかった。でも、この本を読んでもう一度行ってみたくなった。いつか平和が戻ったとき、ウラジオストクからシベリア鉄道に乗って旅をしてみたい。

Posted by ブクログ

2022/07/25

図書館のリサイクルコーナーでたまたま手にとって、読んでみると比喩過剰な独特の文体で普通の人々の人生が鮮やかに描かれているのに魅了された。最初は読みづらかったけど、何ということはない小市民の卑小な感情だとかささやかな生活を、大きく魅せるでもなく小さくこけ落とすでもなく、まるで手に取...

図書館のリサイクルコーナーでたまたま手にとって、読んでみると比喩過剰な独特の文体で普通の人々の人生が鮮やかに描かれているのに魅了された。最初は読みづらかったけど、何ということはない小市民の卑小な感情だとかささやかな生活を、大きく魅せるでもなく小さくこけ落とすでもなく、まるで手に取れるように感じるほど存在感と実感をもって描いている。 すごい作家だと思い、調べてみるとトルストイの孫娘らしい。アメリカに移住して、英訳された短編集を他にも出しているよう。ぜひ読みたい。図書館には無さそうかな。

Posted by ブクログ

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