以前にもユダヤ人古代史研究家による「日ユ同祖論」についての本を読んだが、そちらでは、たしかに膨大な古代日本とユダヤ文化の類似点について例示してはいたものの、こじつけとも思われるような例も含まれているにもかかわらず書き方が断定的であったために、いまひとつ素直に内容を受け止めることができなかった。 その点で、本書の著者は自論について謙虚である。 「日ユ同祖論」を裏付けるかのような神話の類似性、文化の類似性、そして、言語の類似性を挙げていきながら、あくまで「可能性としての日ユ同祖論」が存在するという立場を崩さない。その意味で、現状では決して明らかになることのないこの問題について、「ミステリー」であるという解釈を読者に促しており、好感が持てる。 「日ユ同祖論」について書かれた本を2冊読んだが、まさにこの問題はミステリーであり、日本の宮内庁、あるいは伊勢神宮等の神道のトップが決して外に出さない歴史的資料（彼ら自身もそれに触れることはないのであるが）が衆目にさらされない限り、古代の日本文化、あるいは日本人の起源について明らかにすることは不可能である。 ユダヤ人は紀元前に南北に分裂し、北イスラエル王国の民はシルクロードを中心として世界中に安住の地を求めて旅をしたと思われる足跡があるという。この点については、長い民族の歴史の中、あっても不思議ではないことは容易に想像できるものであるし、あるいは交易等によってユダヤ文化に影響を受けた他の民族がそれを受け継いだと考えるのも不自然ではない。日本にユダヤの足跡が見られることも、確かに文化的類似点が多くあることも事実ではあろうが、決定的な証拠が見つけられない以上、こうした捉え方の延長上にあるに過ぎないと現状では言わざるを得ないのではないかというのが、私の結論である。

日ユ同祖論というと、一般にはトンデモ理論の一つとしての認識なのだろうが、本書を読むと特に神道とユダヤ教の共通点の多さに素直に驚かされるだろう。 本書はこれまでの多くの日ユ同祖論の研究の総ざらい的な内容で、なかには疑問に思われる内容や、こじつけに思われる内容も散見されるが、それらも含めて判断を読者に委ね、遺伝子調査を含んだ一層の学術的な調査を求めている比較的中立的な内容で好感が持てる。 歴史は素人だが、本書を読んだあとでは素朴に考えて、日本の国家創設期に一定の一神教徒（景教徒）の文化的影響が強くあったのは間違いないと思う。

ユダヤ人と古代日本人が繋がっていたという説を深く知る上ではこれ以上の内容のものは存在しないでしょう。古代日本史の解明、日本神話の解明、伝統という認識だけで日本人も説明できない風習や言語の特異性について…など日本とユダヤの関係性を浮き彫りにするだけではなく数々の日本に纏わるミステリーを見事に紐解いています。 古代日本や日本の伝統における内容だけでなく、ユダヤ人の歴史と世界各地に散らばる十支族の行方など素晴らしい内容の一書です。