セイコーさんのクスッと笑える文章もありながら、何度も何度も泣いてしまっていた。今目の前に居る難民の彼らは私で、私は彼らだったかもしれない。いつだってそうなのに日々の生活に揉まれると忘れてしまうことをこの本を読んで思い知らされる。国境なき医師団たちの「いま自分ができることをするだけ」という姿勢はそれだけで目の前の人を救うんだな。今日本で審議されてる入管法改正案も、そのまま進めてしまっていいのだろうか。実際に世界で起きてることをこの改正案を進めようとしてる人たちに知ってもらいたい。

「見に行く」というタイトルに偽りなし。世界的な人道支援団体である国境なき医師団（MSF）の活動している現地に入り、スタッフたちと、支援を受けている人のいくたりかから話を聞く。著者の知識はほぼ取材で聞いた話に限定されている。そのため、MSFの成り立ちや組織、支援の成果、資金の流れといった概要は逆にほとんど見えない。MSFを理解するために本書を読むのはおすすめできない。 普通取材というのは、取材で明らかになった情報が大切なのであって、取材の過程はどうでもいい。本書はそのどうでもよさそうなところに紙数を割いていて、しかも日記風、逐次的な話の進め方に違和感があったのだが、読んでいるうちに、こういうやり方があってもいいよな、という気分になってきた。 話を聞き、彼らの働いているところを目で見ることで、著者の関心がだんだん変わってくる。これは単なる憶測だが、著者がMSFを見に行ったのは、最初は広い意味での好奇心だけだったのではないだろうか。それがスタッフに触れ、働きぶりを聞くにつれ、だんだん著者の関心の焦点が定まってくる。MSFのスタッフたちは、なんのために働いているのか。MSFから給与が払われるかどうかすらわからないが、金目当てでMSFに参加する人がいるとは思えない。 著者は最後のほうで自分なりの結論にたどり着く。それは本書で。

少し物語風な描写が入っており、それが読みやすいと感じる人もいるだろうが、私には読みづらかった。しかし、MSFについてよく分かり、また行った国への知識、説明があり読んでいて勉強になった。 ハイチ、ギリシャ、フィリピン、ウガンダについてそれぞれ取材し、その国の問題点について知識を深められたので、もう一度読んでも良いかもしれない。ただ、多少分厚目で少し大変だが